研究課題/領域番号 |
16H05674
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
加藤 三保子 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (30194856)
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研究分担者 |
小林 昌之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 主任調査研究員 (60450467)
相良 啓子 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 特任助教 (90748724)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アジア太平洋の手話 / 固有名詞手話 / フィジー手話 / フィリピン手話 |
研究実績の概要 |
平成28年度に続き、平成29年度もアジア太平洋諸国を訪問し、現地で手話語彙の収録および手話事情調査をおこなった。平成29年度の訪問国はフィジーとフィリピンの2カ国を選定した。フィジー訪問は平成29年9月3日~同年9月8日。スバおよびナンディを訪問し、フィジーろう協会でろう者社会に関する情報を収集したほか、フィジー手話を収録した。また、ゴスペルろう学校を訪問し、教員や保護者らと懇談。授業参観も実施した。さらに、ろう学生による手話語彙の収録をおこなった。 なお、フィジーでは、過去にダスキン研修生として渡日し、ろう者リーダーとして日本で1年間研修を受けた2名のフィジーろう者(トマシ氏とエティカ氏)の2名と現地で再会し、彼らの紹介で調査をスムーズに実施することができた。 フィリピン調査については、首都マニラの手話データは、日本で入手可能であるため、今回は離島の手話を収集することにし、セブ島とサマール島を調査地に選定した。セブ島には平成30年1月31日に渡航し、4名のろう者(ラプラプ市在住)による手話表現をビデオ収録したほか、ろう者の社会活動等についてインタビューをおこなった。同年2月1日にはサマール島に移動。カルバヨグ市内のデフセンター(Callbayog Deaf Center)を訪問し、施設内見学と、センタースタッフ2名(1名は日本人ろう者、もう一人は現地の聴者)に現地のろう者事情についてインタビューをおこなった。また、センターに入所しているろう者4名の手話表現も収録した。翌2月2日には、市内のキングカレッジ(Christ the King College)に通うろうの学生8名と懇談し、カルバヨグにおけるろう教育事情について情報収集をおこなった。また、カレッジの施設見学もし、キャンパス内のろう学校を視察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定どおり、研究2年目の平成29年度はアジア太平洋諸国の手話収集作業をメインとして、フィジーとフィリピンの2カ国を訪問し、手話事情調査および手話語彙収録を実施した。 フィリピンのセブ島とサマール島での調査については、予定を上回る数のろう者と面談ができたうえ、手話語彙収録したデータ数も予定を上回った。また、ろう者の関係機関(ろう協会やろう学校等)にも訪問でき、教育関係者およびろう学生との懇談を通して各国のろう者事情に係る情報を収集できた。 また、昨年度(平成28年度)に収集した手話語彙データ(台湾、中国のデータ)の整理も順調におこなっている。なお、平成29年度の成果発表は、研究居力者の中山慎一郎氏(フリーランス)が研究チームで保有しているマレーシア手話を題材にとりあげ、国際手話との比較研究をテーマにして発表をおこなった。また、研究分担者の小林昌之氏と代表者加藤が、学会等発表の場で、本研究にも触れ、その成果の一部を紹介した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度については、過去2年間に収集した手話語彙データの整理と分析を重点的におこなう。収集したデータを手話語彙ごとに編集する作業を継続しながら、各語彙の個別表現をリストにして表現の比較研究をおこなう。その過程で、もう一カ国、調査国を追加できる可能性があれば、ベトナムを調査国に選定して追加調査を実施する予定である。 なお、平成29年度のフィリピン調査に同行した重田氏(ろう者。当時は全国手話研修センター職員、現在は「目で聴くテレビ」職員)を本研究の研究協力者として平成30年度から登用したい旨、重田氏の現所属長に許可を申請中である。承認されれば、国際手話にも堪能である重田氏を加えて、データの整理および分析がさらに効果的に実施できる。
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