研究課題/領域番号 |
16H05674
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
加藤 三保子 豊橋技術科学大学, 総合教育院, 教授 (30194856)
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研究分担者 |
小林 昌之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 主任調査研究員 (60450467)
相良 啓子 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 特任助教 (90748724)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 手話 / アジア太平洋の手話 / 外国手話 / 固有名詞手話 / ベトナム手話 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、これまで2年間継続したアジア太平洋地域における手話語彙調査について、追加調査としてベトナムでの現地調査を実施した。調査地はベトナム南部(ホーチミン)、中部(ダナン)、北部(ハノイ)の3箇所とし、合計12名の現地ろう者から各地で使用される手話語彙をビデオ収録した。ベトナムでは、手話語彙収録のほかに、多数の手話関連施設や教育機関を訪問し、情報収集した。ベトナム調査の詳細は以下の通り。 ホーチミン:4名の現地ろう者の手話語彙収録のほか、デフ・クラブを訪問し、ベトナムの青年ろう者らと懇談した。デフ・クラブでは、同行者の相良氏(研究分担者)が、今回の訪問の目的をスライドを使用してプレゼンテーションした後、日本手話の語彙紹介および日本のろう者事情について説明し、ホーチミンのろう者と情報交換をおこなった。 ダナン:4名のろう者の手話語彙収録のほか、市内のろう学校(CDSセンター)を訪問。幼稚部と小学生低学年の授業(ベトナム語(語彙)クラス)を参観した。 ハノイ:現地ろう者4名の手話語彙収録をおこなったほか、市内のろう学校(Xa Dan Deaf School)を訪問。校長先生と面談後、英語教員の案内で校内を見学した。また、市内の情報センターおよびろう協会も視察した。センターでは、ろう者対象の電話リレーサービスを見学。同じ場所に併設されているハノイろう協会の会長との懇談をおこなった。また、ハノイでは中央教育大学(Hanoi Central Pedagogical College)を視察。カレッジの主任教員、英語教員らと懇談後、カレッジに併設されているろう学校(Nhan Chinh Deaf School)を見学した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過去3年間(平成28年度~平成30年度)に収集したアジア太平洋諸国の手話語彙データの整理をおこない、最終的に報告書に掲載する対象国を6か国(中国、台湾、韓国、フィジー、フィリピン、ベトナム)にマカオを加えることに決定した。報告書には、これら各国の手話語彙に日本手話も掲載するため、研究協力者の中山氏(ろう者)に依頼し、調査語彙の日本手話表現をビデオ収録した。 また、語彙収録後にビデオ収録した談話部分のテープ起こし作業を進め、各国の手話事情等について報告書に記述する準備をおこなっている。手話データの編集作業については、相良氏(研究分担者)の職場に勤務する池田氏(手話研究者)に作業を継続依頼し、順調に作業を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度となる2019年度は、報告書作成に向けて、過去3年間に収集したアジア太平洋各国の手話語彙データの編集作業を年度前半までに終了し、並行して、語彙収録後におこなった現地ろう者へのインタビュー場面のテープ起こし作業を実施する。年度後期には、報告書に掲載する手話語彙の動作表現に係る説明文の作成に取りかかる。また、語彙収録後にビデオ収録した談話部分のテープ起こし作業を進め、各国の手話事情等について報告書に記述する内容を検討する。 なお、研究成果の一部を含め、2019年9月に韓国(釜山)で開催される第2回東アジア日本学研究学国際シンポジウム(東アジア日本学研究学会主催)で手話とろう者に関する口頭発表をするほか、2020年2月16日に京都で開催予定の手話研究セミナー(全国手話研修センター日本手話研究所主催)でも口頭発表する予定である。 作成した報告書は、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックで来日する海外(特にアジア太平洋諸国)の聴覚障がい者が、各国の生活基本語の手話表現を知ってもらうため、リーフレットとして数百部作成し、無料で配布することを検討する。また、今回の研究で収集したデータをさらに分析し、アジア太平洋各国の手話の対照言語学的研究をさらに進めたい。
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