研究課題/領域番号 |
16H05679
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
山本 まゆみ 宮城大学, 国際交流・留学生センター, 准教授 (60709400)
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研究分担者 |
倉沢 愛子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 名誉教授 (00203274)
高地 薫 愛知県立大学, 外国語学部, 客員共同研究員 (30345178)
スリョメンゴロ ジャファール 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (40600440)
山崎 功 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 教授 (60267458)
後藤 乾一 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 名誉教授 (90063750)
Horton William.B 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, その他(招聘研究員) (00625262)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本占領期インドネシア / 人脈・ネットワーク / 医療教育 / 宣伝 / 軍政監部 / オランダ植民地 / マラリア / 沖縄 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本占領期インドネシアの軍・政・官・財・学という分野に焦点を当て、人脈や社会ネットワークから、戦前および戦後への連続性や継続性を詳らかにすることである。研究は、海外研究協力者との連携で行われ、研究経過および成果を英語で発表することにより、国内外のインドネシア研究の一助になればと考えている。 本研究の初年度にあたる平成28年度は、本研究分担者と海外の研究協力者のそれぞれが、現時点での研究状況を確認するため、また今後の連携を深めるため日本に招聘した。海外からの研究協力者は、ミシガン大学歴史学部Rudolf Mrazak名誉教授、マレーシア大学Jim Collins特任教授、シドニー大学Hans Pols准教授の3名である。6月には日本国内で開催された国際学会(AAS-in-ASIA)に共同参加(Mrazak, Collins, 山本、Horton)日本占領期の医療政策を軍政監部および医療部隊作成の出版物から考察する発表を行った。また、10月には国際シンポジウムを開催し、Pols准教授が占領期の医科大学校に関する基調講演を行った。今年度は、医療、教育の面からの研究が比較的成果を出してきた。このことは、3月のトロントで開催された米国アジア学会の年次総会でも成果発表ができ、研究代表である山本、分担者Horton、高地および米国Augusta UniversityのAndrew Goss教授/歴史学部長も参加し、日本占領期の医療とオランダ植民地時代の連関、医療啓発映画に見られる衛生政策、マラリアの治療体制と性別による役割の違いなどの成果を発表した。 医療をつうじた人脈や知識の継続に関する研究がおこなわれると同時に、国内外の調査(オランダ、インドネシア)をつうじ、今後の研究の基礎的資料になる、当時の新聞『Asia Raya』、『Tjahaja』、および雑誌『Pandji Poestaka』を収集することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の計画では、資料整理を行いホームページを立ち上げる予定であった。しかし、今後の研究進展のスピード感を考え、海外研究協力者との意見交換および研究情報の共有をすることで、緊密なコミュニケーションができるよう、海外研究協力者を招聘した。このことは研究2年度目に行う予定だったが、初年度行ったことで、結果として、医療、教育面の人脈・ネットワークに関する研究は着実に進展した。また、国際学会発表も2回行い、すでに英語で研究を発信し始めたため、ホームページは2年度目の立ち上げになったが、本研究の国際的認知度も出てきた。 今までの研究の資料整理およびホームページの立ち上げ、さらには資料のデジタル化に関しては、初年度の計画から2年度目の計画に変更した。しかしながら、新しく収集した史資料に関しては、逐次デジタル化を進めている。ただし、それぞれの研究者が過去に集めた資料に関しては、デジタル化になお一層のスピード感が必要である。初年度予算で、多種のスキャナーは購入し、一部のデジタル化は始まったが、所有している史資料の量から2年度からは人を雇用する予定である。ホームページに関しても、平成28年度の研究成果も含め2年度目の夏までには立ち上げることを予定している。 研究調査に関しては、それぞれの研究者が国内外へ史資料収集また面接聞き取り調査へ積極的に赴き、公開および非公開文書の収集を行ってきた。このような調査の結果は、ほぼ毎月定例研究会を行い、研究の進捗状況報告のほか、毎回の研究会で必ず1名が1時間程度の研究成果報告をおこなってきた。定期的研究会を行うことで、研究分担者研究代表の、情報共有ができるのみならず、研究を推進する歯車になっていると確信している。 初年度の研究は、次年度の研究計画と前後することになったが、研究内容に関しては、順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、4年に渡る研究期間であり、残りの3年間で成果を出さなければならない。初年度の状況をふまえ、修正した今後の大まかな作業の計画を年度ごとに考えた。2年度目は、資料整理、ホームページ立ち上げ、デジタル化といったインフラを整えることが中心となる。3年度目は、2年度目に整理した史資料に関する情報をもとに、今後の研究に必要な史資料を中心に調査収集する。最終年度は、成果を発表する。多少規模の大きな国際シンポジウムを行う予定であり、海外の協力者も招聘し、2日間にわたる国際シンポジウムを考えている。 上記の内容は、研究推進の大まかな方向性であるが、このような大きな流れの中でも各研究者は、史資料調査および面接聞き取り調査、また現地調査へ赴き、それぞれの研究を推進していく。また、重要度の高い資料に関しては、英語に翻訳し国内外の研究者への情報提供をすることも予定している。資料の翻訳および公開に関しては、それぞれの資料の著作権、プライバシーにかかわることがないか慎重に確認してから行うこととする。 資料収集に関しては、今年度の研究調査の結果、当初の計画より時間がかかることが判明した。文書館によっては、写真撮影、タイプ、コピー、スキャンといったことを認めておらず、一つ一つの文書を手書きで情報収集しなければならない。また、史資料も著作権の関係で、手書きであっても全体を写すことができない場合もある。このため、文書調査には当初の予定の2~3倍の時間はかかるものと考える。文書自体の専門性もあり、かつ文書によっては非公開ということもあり、人に依頼することも困難である。このようなことから、研究の進展が遅れる可能性もあることが懸念される。資料取集に相当の時間がかかる場合は、2年度目に整理する資料情報から、収集資料の順位を決め調査することで対策ができると考えている。
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