本研究は、北魏から唐代にかけての龍門石窟とそれに関連する仏教文化について、京都大学人文科学研究所(以下「人文研」という)などに所蔵する戦前の写真や拓本を整理し、それをもとに龍門石窟研究院をはじめとする中国の研究機関と共同で現地調査をおこなうことを目的としている。令和2年度の研究成果は以下のとおりである。 (1)東京大学と人文研に所蔵されている戦前の石窟写真について、東京大学の平勢隆郎名誉教授の協力のもと、北京の清華大学出版社から『清末民初中国文化遺産図片史料集』石窟巻(全4巻)として出版する計画を進め、雲岡石窟は岡村、龍門石窟は稲本泰生、鞏県・響堂山・天龍山石窟は向井佑介が分担執筆し、中国語の翻訳が完成した。(2)人文研に所蔵する龍門石窟造像記拓本のうち、稲本を班長とする「龍門北朝窟の造像と造像記」班で古陽洞の悉皆的な解読が完了し、報告書の編集に着手した。(3)COVID-19感染拡大により中国現地調査が不可能になり、兵庫県立考古博物館に所蔵される中国漢南北朝期の青銅製仏具について組成分析と鉛同位体比分析を実施した。その結果、胡舞紋をもつソグド系銅鉢は銅錫二元系響銅で後漢鏡タイプ、業城周辺で出土するようなミニチュア明器セットは銅錫鉛三元系響銅で前漢鏡タイプ、法隆寺献納宝物に類例のある8世紀の水瓶は銅錫鉛三元系響銅で朝鮮半島系遺物ラインの鉛同位体比であることが判明した。(4)中国語版の岡村著『雲岡石窟的考古学研究』(四川人民出版社、2021年、総317頁)の出版を準備した。
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