本研究では、強制移住の歴史経験をもつバナバ人を対象とし、 共感や同情といった心的事象に着目する。これらの感情がバナバ人ディアスポラをいかに連帯させるのか、同時に、近接する他者に対する排他性をいかに生成させるのか追究する。感情に関わる人類学の文献研究に加えて、故郷バナバ島からフィジーのランビ島を経て、首都スヴァおよびキリバス、さらにニュージーランドに再移住した人々の生活実態を調査した。その結果、個々人の生活経験に応じて自己/他者認識が大きく異なること、親族を核に据えた、エスニシティの境界を越えた連帯が生じること、逆に、集合的他者カテゴリーの存在を否認することが示された。
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