研究課題/領域番号 |
16H05699
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
米川 正子 立教大学, 21世紀社会デザイン研究科, 特定課題研究員 (80626474)
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研究分担者 |
村尾 るみこ 立教大学, 21世紀社会デザイン研究科, 助教 (10467425)
杉木 明子 神戸学院大学, 法学部, 教授 (40368478)
新垣 修 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (30341663)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 難民 / 外交政策 / 人間の安全保障 / ルワンダ / アフリカ / 国際関係 / 土地所有 / 国際政治 |
研究実績の概要 |
本年度は、代表者と分担者の杉木は新たにスワジランド、タンザニア、マラウイーとコンゴ共和国で聞き取り調査をし、また昨年度に引き続き、ザンビア、米国と加国でも調査を行った。聞き取り調査の初の対象者は32名(内1名はコンゴ難民、1名は教会関係者、その他ルワンダ難民)、そして2回目の対象者(ルワンダ難民)は8名である。その他、英国、仏国とベルギーでルワンダ難民、研究者とジャーナリスト15名にもインタビューをした(内1名はルワンダ難民。初は7名)(総計55名)。 これらの聞き取り調査と先行研究を重ねるにつれて、以下3点がより明白になった。 1.ルワンダ難民の帰還を妨害する主な要因に、土地と財産の所有権、難民に対する難民出身国・庇護国政府の態度、UNHCRの説明責任、そして国外避難や人権侵害が与えた難民への精神的ダメージの問題が挙げられる。特に難民の精神的不安定性は可視化されていないために十分に研究されておらず、もっと着眼が必要である。多くの難民は出身国・庇護国政府から20年以上脅迫を受け、就労と教育の機会もないため将来の展望が見えず、不安定な地位にいる。2013年の難民地位の終了条項の適用によって、難民の恐怖心がさらに高まった。 2.アフリカの難民問題を理解するためには、難民出身国・庇護国政府の思惑を含めたアフリカの政治を分析する必要がある(ルワンダ難民地位の終了条項はアフリカの庇護国でしか適用されていない)。庇護国政府による難民の政治利用は既に世界各地で行われてきたが、コンゴ共和国のような一般的に国際社会から注目を浴びていない国における同様なケースは、ほとんど知られていない。 3.ルワンダ難民の帰還「後」の情報がほぼ皆無である。帰還後、土地所有権の回復、受入コミュニテイーにおける帰還民の定住と人権状況、そして国外への再避難に関する情報はほどんどない。その情報収集と分析が今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難民地位の終了条項を担当していた研究分担者は、2017年4月に他の者に交代したために、その研究の進捗が多少遅れている。新研究者の研究内容は、自身の専門に合わせて、研究内容を難民地位の終了条項の適用、保護の喪失と無国籍の関係性に変更することに合意した。 また難民の人間の安全保障に関して、外部の研究者とともに特に国際法の視点から研究を進めたものの、まだ議論を深める必要がある。 その他の研究は特に問題なく進められている。
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今後の研究の推進方策 |
ルワンダ難民の地位の終了条項が最終的に2017年末に適用されたが、それ以降のルワンダ難民の政策や動向に関する情報収集と分析を続ける。終了条項と無国籍の関係性、そしてルワンダ難民の事例を使って人間の安全保障の課題に関する研究を進める。その一環として、外部講師とともに「人間の安全保障と難民保護」(仮)に関する公開研究会を7月に開催する。 最終年度に当たる本年度は、研究成果を多数の国内外の学会で報告をする(アフリカ・アジア研究イニシアテイブ、日本アフリカ学会、日本平和学会、International Humanitarian Studies Association, International Peace Research Association, International Studies Associationなど)。その際に、可能であれば、元難民と海外の研究協力者を日本に招聘して、難民の視点から難民保護と帰還の課題について議論することを検討している。 それに加えて、代表者はPost-Genocide Rwandan Refugees:Why They Refuse to Return “Home” Myths and Realities(Springer)を、そして分担者、海外研究協力者と元難民と共に、Repatriation, security, and peace: case study of Rwandan refugees という編著書を出版する予定である。
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