研究課題/領域番号 |
16H05707
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
岡田 仁孝 東京国際大学, 国際戦略研究所, 教授 (50158812)
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研究分担者 |
堀口 朋亨 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (20568448)
スタニスロスキー スミレ 東京国際大学, 国際戦略研究所, 講師 (30636840)
Amponsah Samuel 東京国際大学, 国際戦略研究所, 講師 (50741534)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インクルーシブビジネス / 貧困削減 / BOPビジネス / 多国籍企業 / 組織間協力 / 制度的繋がり / 現地パートナー / 持続可能な発展 |
研究実績の概要 |
インクルーシブビジネス(IB)は、貧困層を市場原理の中に包括し、貧困を削減し、持続可能な発展に貢献するビジネスである。経営手法に加え、社会課題解決に向けた世界の制度的発展や貧困層社会の制度への理解が必須で、いかに社会課題解決と利益創出活動を融合するかが要となる。制度とは、人的交流に関するゲームのルールとその仕組みなので、貧困層を先進国のビジネス制度の中に取り込むのか、企業が貧困層の制度の中に入り込みビジネスを構築するのか、後者であれば、境界横断型組織間協力や現地密着型経営手法のような「制度繋がり」が重要となる。 初年度の、特に2件の成功例と1件の失敗例から、「制度的繋がり」の影響が大きいと理解した。IBにて(1)現地パートナーを使う、(2)現地人従業員だけを使う、(3)現地従業員を使い、ビジネスと社会貢献の要素を共振させる、という三つの形態を見出した。 (1)のある一社は、素晴らしい現地パートナーの働きと現地ニーズに合った製品で成功しているが、ある1社は、現地パートナーとの「制度繋がり」の構築に失敗し、その関係がリスクとなり、撤退した。(2)は、多くの企業が実施するが、ある企業は、製品が現地ニーズに合っていながら、貧困層に利益志向であると判断され、発展できないでいる。貧困層との「制度繋がり」の問題である。(3)は、これらの問題を克服している医薬品企業の場合で、ビジネスと社会貢献を別々にし、前者にてコストと値段を極力下げBOPビジネスを実施し、後者にて社会貢献として、ビジネスに関係なく貧困層の健康増進のため活動している。結果、ニーズを掘り起こし、医者が安価で信頼できる医薬品を処方するので、貧困層の購買に繋がっている。「制度繋がり」を作らず、二つの制度を自然な繋がりの流れとしている。 他の「制度繋がり」の形態は何で、なぜ違いが出てくるのか、来年度の調査と2年後の分析に期待する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度7月までの準備期間に次のことをした。①理論構築のための論文(35ページ)と②英語と日本語のプロジェクト説明書を完成。③日本チームで、インドにてインクルーシブビジネス(IB)を実施している企業にプリテストを実施(2016年6月)し、質問票を改良。④2015年から構築していた企業リストを継続して改良。⑤2016年6月にインドを訪問し、現地チームと論文、質問票、実施マニュアル、経理書類等に関して討論し、すべての準備を完了。⑥岡田がUNDP東京に調査協力を依頼し、また、⑦インド渡航の際、UNDPのIBの拠点、イスタンブールにあるUNDP Istanbul International Center for Private Sector in Development (IICPSD)に協力を要請、素晴らしい企業を紹介してもらった。 企業インタビューの計画は、全部でインド(予備のバングラデッシュ企業を含む)12社、アフリカ(ガーナ、ケニア、タンザニア)12社である。①日系、②EU系, ③北系米多国籍企業、そして、④現地企業の各々にインド3社とアフリカ3社を予定。産業に関しては、①農業、農業製品、②飲料水、③ソーラーランターン、④医療・医薬・衛生関係と決めた。 2016年度の予定は、インド8社、アフリカ5社の計13社であったが、企業訪問の拒否や延期、また、IBプロジェクトからの撤退等により、インド企業7社とアフリカ企業4社のインタビューにとどまった。しかし、繰越し予算にて、バングラデッシュ2社とアフリカ1社を訪問し、2016年度に合計インドとバングラデッシュの9社とアフリカの5社を調査した。但し、バングラデッシュの2社は、テロの影響で現地調査が実施できず、数としては予定よりも多くなったが、厳密には、全部の資料が揃わなかったため、インドでの1社が予定より少ない結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度(繰越分を含む)に、企業調査をインドで4社、アフリカで6社の合計10社を予定している。2018年度に、アフリカの1社と、予算に余裕があれば、全部の資料が揃わなかったインドの1社を調査する。これらの調査旅行の合間を縫って、アルバイトを雇い、(1)インタビューのテープ起こし、(2)起こした内容をもとに質問票の書き直し、(3)全部で6種類に亘る質問票のコード化、(4)そのコードを基に、Answer-typing Sheetに入力し、全情報のデジタルファイル化をする。並行して、重要な企業のケースを書く。 2018年度には、データ化を早く完了させ、質的と量的データの両方を同時に扱えるDEDOOSEにてデータ分析を始める。それ以前に、研究員間での質的な分析の共有部分を作るために、質問票内の用語を全員で共有する。 2019年1月に、東京にて国際会議を開く。初日は一般参加者を含めた80名ほどの大きな会議を開催し、ケースを中心に7名の研究員全員で発表する。キーノートスピーカーとして、米国コーネル大学からMark B. Milsten (Director, Center for Sustainable Global Enterprises)とカナダ国ヨーク大学のGeoffrey M. Kistruck (Ron Binns Chair in Entrepreneurship)を招聘する。二日目には、30名ほどの専門家を招待し、セミナーを開く。この二日間の国際会議は、アジア経済研究所が共催機関として、支援することを約束してくれている。そして、三日目には、DEDOOSEによるデータ分析や出版に関して、研究員だけの会議を開く。出版は、ケースを集めた本とデータ分析を基にした本の2冊を予定している。論文の出版は、各研究員が随時行うという理解でいる。
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