研究課題/領域番号 |
16H05708
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
板垣 博 武蔵大学, 経済学部, 教授 (20125884)
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研究分担者 |
朴 英元 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (90526485)
高 瑞紅 和歌山大学, 経済学部, 教授 (30420459)
金 熙珍 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (40634530)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経営の異時点間比較 / 知識移転 / 海外子会社の能力構築 / 日本人出向者 / 経営進化 |
研究実績の概要 |
2016年度は、研究テーマである海外拠点の能力構築と進化を考察するために、8月~9月にタイ、マレーシア、3月に台湾、韓国における日系企業など22の企業・機関を訪問した。 主なファクトファインディングは次の通りである。①タイにある自動車関連会社は、従業員規模の面でも、コアになる内製部品の生産と研究機能の付加など質的な面でも90年代初頭に比べて格段に能力を高めてきている。②ASEANに事業展開をする電機関連企業においては、同じ企業グループ内の中国拠点との競争があり、規模の面での成長はあまり見られないが、製品開発や組立などの機能面で独自性を発揮し、グループ内でのプレゼンスを高めようと努めている。③規模・機能の面での成長が著しいタイの自動車関連拠点では、それに対応するために、日本の親工場の人材ならびに各拠点の出向者を集約して、製品開発、生産技術、現場管理の面で支援機能を担う「マザー工場」型地域統括会社が生み出されている。これは、同じ地域統括会社と呼ばれても、戦略面での親会社機能の移管が中心となる欧米企業の地域統括会社とは、かなり性格の異なる組織と考えて良いだろう。④日本人出向者主導の経営スタイルに劇的な変化はないものの、在籍年数が長く日本本社の機能的・規範的企業文脈的知識を身に付けたローカル人材の中から経営トップが生まれつつある。⑤海外拠点で最高責任者をローカル人材が務めるのは韓国・台湾・中国に多く見られ、その点ではASEAN地域と好対照をなす。⑥台湾の自動車拠点では、日本化をいっそう深化させ製造現場の能力を高めた「国瑞タイプ」と日本企業との関連が希薄化し台湾化が顕著な「裕隆汽車タイプ」との分化が顕著である、⑦韓国の地場中小企業には、どこまで一般化できるかは別として、日本の中小企業と類似した能力を構築してきた企業が存在する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、タイ(2016年8月22日~25日)、マレーシア(8月29日~9月2日)、台湾(2017年3月8日~14日)、韓国(3月15日)における調査を実施した。タイ・マレーシア・台湾・韓国における以下の企業・機関におけるインタビュー調査を実施した。()内は主なインタビュー相手。タイ:いすゞ自動車(副社長(EVP)、法務担当副社長、生産担当副社長、購買部長、総務人事部長)、いすゞエンジン製造(社長、製造担当Exe、生産企画担当Exe)、三菱電機オートメーション(社長、企画担当役員、モーター・ポンプ担当役員)、シチズンマシナリ(社長、生産管理部長)、トヨタ自動車バンポー工場、デンソー・インタナショナル・アジア(副社長(生産革新)、副社長(調達)、地域企画部長)、トヨタ自動車アジアパシフィックエンジニアリング&製造(副社長(EVP、生産管理)、副社長(EVP、購買)、副社長(VP、購買技術)、副社長(VP、TPS推進))。マレーシア:金海機械工程(MD、ED、GM)、TDK (社長、取締役) Sdn Bhd、永城(董事、工場長)、パナソニックAVCネットワーク(取締役(製造技術)、取締役(財務)、JETRO(所長)。台湾:台湾松下電脳(総経理)、国瑞汽車(総経理)、中華汽車新竹工場&楊梅工場(副社長2人、工場長)、裕隆汽車三義工場(副総経理)、経済部台日産業合作推動弁公室、裕隆集団最高顧問、滝澤科技(董事長、総経理)、協欣金屬工業(董事長)、新三興(総経理、副総経理)。韓国:UNICK(常務(営業)、課長(戦略企画)、次長(海外営業))。 研究上、重要な企業の中で、先方の都合により訪問できなかった企業も少数だがあった。ただし、その穴を埋めるべく華人系企業なども訪問でき、日本企業の特色を明らかにするための比較対象としても、日本企業取り巻く経営環境を知る上での有意義であった。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、8月22日~25日にアメリカ調査、8月28日~30日にメキシコ調査を行う。アメリカでは以前訪問した電機関連の企業の多くが撤退しているため、経営比較を行う対象は自動車関連企業を中心とせざるを得ない。そこで、アメリカでは自動車関連企業が多く進出しているテネシー州に絞って調査を行う。メキシコでも自動車関連企業の調査をメキシコシティ周辺およびアグアスカリエンテスにおいて行う予定である。また、国外に勤務先のある研究協力者が多いことから、調査期間中の土日を利用して研究の方向性のベクトル合わせや調査で明らかになったファクトファインディングの検討、今後の研究の進め方や研究成果のまとめ方などに関する研究会を開催する。 2018年度は8月に中東欧調査を実施する予定である。当初は、チェコ、ハンガリー、ポーランドの3国を訪問する予定であったが、予算の制約から調査対象国をチェコに絞る予定である。ここでも、調査期間中に研究会を開催し、研究成果のとりまとめのための準備を開始する。 2018年度の調査終了後、国内に勤務するメンバーだけででも研究会を開催し、調査結果のとりまとめの方針を確定し、ファクトファインディングの整理を行いながら出版に向けての執筆準備に取りかかる。
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