研究課題/領域番号 |
16H05714
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
樋口 直人 徳島大学, 大学院総合科学研究部, 准教授 (00314831)
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研究分担者 |
稲葉 奈々子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | デカセギ / 日系人 / リーマンショック / 東日本大震災 / 社会移動 / 外国人 / 移民 |
研究実績の概要 |
今年度は、大きく以下の調査を行った。合計70名にインタビューを行っている。 1、2016年12月から2017年1月にかけて、ペルーのリマ市内およびリマ市近郊のワラル市において、日本からの帰還移民に対してインタビューを行った。 2、日本国内において、これまでの知己から紹介を得た家族、1)の調査で紹介を受けた家族に対してインタビューを行った。1)2)の聞き取りにより、当初の仮説に対して次のような見通しが得られた。トランスナショナリズムからディアスポラへという作業仮説に対して、どちらでもないという類型がありえる。つまり、出稼ぎが一時的なものでペルーでのライフコースに影響を与えていないか、日本に定住しペルーとの関係が切断したもの、この古典的移民のパターンはまだかなりの比率存在する。トランスナショナリズムの実現は、日本語とスペイン語の両方をマスターし、どちらでも生活できる場合に多くみられる。ディアスポラは、家族離散を典型的な形態としていた。ライフコースにより家族の居住地が分岐するパターンである。 3、比較対象としてキューバ調査を行った。ペルーと日本の経済格差はかなり縮小し、5分の1程度の賃金格差、職種によっては大差ない場合もあるが、キューバと日本の賃金格差は100倍ある。1300名いるといわれるキューバ日系人が出稼ぎに出ない背景を調査した。そこでわかったのは、かつてはパスポートを取得しにくかったものの、現在は比較的容易に取得できるし海外で労働することも不可能ではない。しかし、キューバと日本の労働市場を媒介する組織がないがゆえに、出稼ぎへの希望を持ちつつそれが実現していない。キューバ日系人もそれを現実的な選択肢とはみなしていなかった。つまり、賃金格差よりも移民が生活上のありえるオプションとして存在するか否かが重要であり、その点で賃金格差の縮小する中での移民現象の継続する背景が浮かび上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
件数的にはやや少ないものの、今後の調査につながるネットワークへのアクセスを果たしたから。
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今後の研究の推進方策 |
ペルーに行けばかなりの調査ができる体制になっており、年2回の調査を継続する。
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