研究課題/領域番号 |
16H05714
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
樋口 直人 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(社会総合科学域), 准教授 (00314831)
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研究分担者 |
稲葉 奈々子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (40302335)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日系人 / デカセギ / 在日外国人 / 移住システム |
研究実績の概要 |
本年度は、11月、12月、2月と3回のペルー調査を実施し、日本国内の調査と合わせて141名に聞き取り調査をおこなった。これによる成果は以下の通り。 1.これまではリマおよびその近郊がほとんどで、クスコで5名に聞き取りしたのみだったが、Madre de Dios州でも35名に対して聞き取りを実施した。地方ではリマより(特に地価を中心とする)物価が安いため、デカセギによる貯蓄の投資効果が大きい。そのため、牧場を購入するといった投資も可能だった。ただし、こうした投資ができたのはアマゾン開発が進む前のことであり、その時点で牧場を購入できた者の資産価値は10倍程度になっている。 2.本年度は第二世代の進学問題に重点的に取り組んだ。日本で学業を修了した若年層の学歴の規定要因を解明することを目的とするため、これについては主に日本で聞き取りを進めた。これまでの調査と合わせて日本で学業を終えた第二世代79名の聞き取りデータを用いて、特に大学進学の要因および進学をめぐる課題を明らかにした論文を執筆した。そこで得られた示唆は、親の学歴や家族の安定性といった通説的な要素は、確かに進学と関連しているが、大学進学に際しては入試制度の影響が大きいことだった。すなわち、南米系第二世代は一般入試より特別入試を経て大学入学する者が多く、「入試の多様化」がもたらす意図せざる結果として第二世代は進学していた。 3.理論枠組みの開発にも取り組んだ。ジェンダーによる移住経験の差を明らかにするべく、編入様式論に再生産過程を組み込んだ形で、「ジェンダー化された編入様式」という概念を提示し、それにより移民集団の分岐を説明した。ここで得られた示唆は、 日本人との婚姻比率が低いペルー人にとって、社会移動の機会が制約されることだった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に得た知己を通じて、予定通り十分な人数に対する聞き取りを実施できた。また、その調査を生かしたまとめとして、単なる実態調査報告にとどまらない論文を2本執筆できた。
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今後の研究の推進方策 |
・労働市場や職業移動に関して分析し、論文にまとめる。そのため、2018年6月の関東社会学会に報告エントリーした。 ・日本国内やリマでの調査を継続するが、それに加えてMadre de Diosでの再調査、CuzcoやHuanucoでの調査といった形で、ペルーの地方でも調査をおこなう。これについては、すでに調査の承諾を地元の組織から得られているため、確実に進めることができる。 ・ペルーでは、国を挙げて食文化の振興をおこなっており、それに相応する形で日本のペルーレストランの研究を重点的におこなう。
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