研究課題
銀河系第4象限の非常に細長く伸びたフィラメント構造を持つ赤外線暗黒星雲であるネッシー星雲の試験的に取得した近赤外線観測データを解析を行ったところ、今までに観測された暗黒星雲の一般的な特徴であるフィラメントに対して垂直である磁場構造とかなり異なる磁場構造をネッシー星雲が持つ可能性が示唆された。このため、重要なターゲットと位置づけて既観測データを含めて星雲全体の磁場構造を明らかにすることとした。また、大質量星を含む星団形成が既に起きている巨大分子雲として銀河系第4象限の代表的な若い大質量星形成領域であるRCW106領域を選定した。上記で選定したネッシー星雲を7月に2週間、南アフリカ天文台サザランド観測所のIRSF 1.4m 望遠鏡と近赤外線偏光測定装置SIRPOLを用いて、前半夜に観測を行った。この結果、ネッシー星雲の主要部分をほぼカバーできた。後半夜は、銀河系第1象限で進化の進んだ大質量星形成領域であるM16や比較的小サイズの暗黒星雲の近赤外線偏光観測も合わせて行った。また、3月にはRCW106領域の観測を開始したが、直前に起きた観測装置トラブルからの回復措置を取る必要があり、観測期間の2週のうち1週間を費やした。このため、予定していたRCW106の観測予定領域の1/3以下しかカバーできなく、次回も引き続きRCW106領域の観測を行うことになった。他に、昨年度取得した大質量星形成領域観測データの公表も行った。本研究は近赤外線偏光観測を主に行い、自前の可視光観測装置であるiPolをサザランド観測所の1.0m望遠鏡に持ち込んで、補助的に可視光による観測で分子雲周囲の磁場構造も調べることを計画していた。しかしながら、サザランド観測所には新たに高性能な可視光偏光観測装置が導入されるために我々の装置の持ち込みが許可されない見込みとなり、当初の計画を断念せざるを得なかった。
3: やや遅れている
赤外線暗黒星雲のネッシー星雲の観測は予定通りに進んだが、若い大質量星形成領域であるRCW106領域の観測は装置トラブルの影響で必ずしも予定通りに進まなっかたために未観測領域を引き続き観測を行う必要がある。また、28年度は十分な研究時間が割けないこともりあり、データ解析が遅れている。
引き続き南アフリカ天文台サザランド観測所のIRSF 1.4m 望遠鏡の観測時間を確保し、大質量星形成領域と考えられる赤外線暗黒星雲と若い大質量星形成領域の偏光観測データをできるだけ多く得て、星間磁場と大質量星を持つ星団形成の関連性について調べる。また、研究時間をできるだけ確保してデータ解析を進める。サザランド観測所には新たに導入される可視光偏光観測装置の使用できる可能性については現時点では明らかでないため、状況把握に努める。今後にその装置を使用できる可能性があれば、新装置による可視光偏光観測の可能性も検討する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
The Astrophysical Journal Letters
巻: 830 ページ: L23(7pp)
10.3847/2041-8205/830/2/L23