南米チリ・アルゼンチン国境に位置するパタゴニアでは、淡水性カービング氷河(湖に流入する氷河)が急速に縮小して海水準上昇に影響を与えている。本研究では、研究事例の少ないこれらの氷河に着目し、急激な氷河変動とそのメカニズム、氷河・湖相互作用の解明に取り組んだ。現地観測の結果、湖底付近に冷たい氷河融解水が停留して水中融解が抑制されること、氷末端の水中融解が氷河の季節変動を駆動すること、カービング(氷山分離)による津波の規模から氷山の質量を推定できること、などが明らかになった。また人工衛星データの解析によって近年の氷河変動(末端後退、氷厚減少、流動変化)の定量化に成功した。
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