研究課題/領域番号 |
16H05738
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 毅彦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (10297632)
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研究分担者 |
鍵谷 将人 東北大学, 理学研究科, 助教 (30436076)
佐藤 隆雄 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD) (50633509)
大月 祥子 専修大学, 商学部, 准教授 (90523291) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 金星 / 後光 / 位相角 / 偏光 / 大気 / ウォラストンプリズム / あかつき |
研究実績の概要 |
金星を小位相角で観測する(観測者から見てほぼ満月状に見える)機会をとらえた観測計画を「あかつき」に組み込み、実施した(2016年5月から6月)。IR1, IR2, UVIの3台のカメラによるデータを取得でき、その解析に取り組んだ。IR2については、固有の「点広がり関数」があることが判明し、立命館大学の木股教授の助言を得て、それを近似する数学関数を構築した。これを用いたデコンボリューションを画像に施すことにより、数パーセント程度という高い精度でディスクの測光ができることを示した(論文を投稿中)。金星大気における放射伝達の計算を波長方向へ高い分解能で行う計算機環境を、新規に導入した計算機上で構築した。 地上観測の準備としては、ハワイのハレアカラ天文台から赤外線カメラNIIHAMAをいったん日本へ持ち帰り、光学調整や上記「点広がり関数」の実験室再現を行っている。もうひとつの地上観測として、偏光撮像観測をワンショットで行う(大気ゆらぎの影響を著しく軽減できる)よう、ウェッジド・ダブルウォラストン・プリズムの製作を計画した。これは材料の入手性・加工性など困難が大きく、メーカー(日東光器)で詳細な検討を実施した。結果として、FY28年度内には完成できないことが判明したが、FY29年初に完成が可能であり、次年度以降の観測計画に支障を生じないことを確認できた。 小位相角での観測を含む「あかつき」金星探査の成果を、アジア大洋州地球科学学会、アメリカ天文学会惑星科学分科会、日本地球電磁圏・惑星圏学会で報告している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金星探査機「あかつき」搭載カメラを用いた昼面観測(UVIカメラ 283, 365 nm、IR1カメラ 900 nm、IR2カメラ 2.02 μm)、夜面観測(IR2カメラ 1.735, 2.26 μm)を実施し、順調にデータを蓄積することができた。2016年4月から6月は昼面観測に適しているとともに、小位相角を含む良質のデータが多数得られ、機器特性を明らかにすることで高い精度の物理情報抽出を可能としている。また、計算機環境の整備も順調に進め、得られたデータを説明する放射モデルを構築することができるようになっている。 2016年12月以降は、「あかつき」金星探査と協調する形で、各地の天文台へ関連研究者が訪れ地上観測を実施している(米国ニューメキシコ州アパッチポイント天文台、ハワイ州マウナケア山IRTF望遠鏡など)。地上データと「あかつき」データの比較研究を容易にするための仕組み(サーバ、およびデータフォルダ)には神戸大学の協力を得ており、これらも逐次進められている。 ダブル・ウォラストン形式の偏光撮像装置は、コアとなるプリズムの製作に時間がかかることが判明したため年度内には完了できなかったものの、次年度早期に入手可能の予定であり、研究計画の進行に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の進捗がほぼ計画どおりであったため、FY29も当初計画どおりに進める。「あかつき」周回軌道と太陽との位置関係により生じる「昼面観測好機」「夜面観測好機」(おおむね4ヶ月毎に入れ替わる)を使い分け、データを継続的に取得する。得られたデータ(UVI, IR1, IR2)を放射伝達モデルにより解析し、エアロソル特性を決定する。 赤外線カメラNIIHAMAによる地上観測(米国ハワイ州ハレアカラ山)、ダブル・ウォラストン形式の可視光偏光撮像装置による地上観測(京都大学飛騨天文台)を実施する。前者は「あかつき」夜面観測の補助、後者は「あかつき」にはその機能のない偏光観測であり、特に微粒子の一次散乱特性の決定を行う。
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