研究課題
本研究課題ではジュラ紀にはじまったと考えられる穿孔性二枚貝による海洋底に堆積した陸上植片の分解の起源と分解過程の初期変遷を明らかにすることを目的としている.そのため,まずは木材穿孔性二枚貝の出現最初期のアルゼンチンの中部ジュラ系から産出した穿孔性二枚貝が形成したと考えられる穿孔痕について解析を進めた.一部試料についてはマイクロCTスキャンを用いた解析も実施した.その結果,穿孔痕は材の表面からほぼ垂直にあけられた涙状もしくは棍棒状の孔形状であった.また,穿孔痕内表面には茶褐色の鉱物が沈殿しており,一部に貝類が印象化石として保存されていた.貝類化石については,現在詳細な形態観察を継続しているが,穿孔性二枚貝であることは間違いなく,本化石記録は穿孔性二枚貝類として,現時点で,世界で二番目に古い.穿孔痕の形状からは,本種は材を住み処として利用し,食物源としては利用していなかった可能性が高い.つまり,本種は材を物理的に破砕して小片化するものの,現在の材食性の穿孔性二枚貝に見られるような共生細菌が生成したセルラーゼによる材の分解には寄与していない可能性が示唆される.これを確かめるために,現在本標本の穿孔痕およびその極近傍の解析を進めている.また,ポーランドで開催された1st International Workshop on Ancient Hydrocarbon Seep and Cognate Communitiesにおいて,これまでの大型有機物遺骸に成立する生態系の中生代以降の変遷について現時点での知見をまとめて公表した.同時に,翌年度に実施予定のヨーロッパ地域に分布するジュラ系および白亜系のフィールド調査の下見および情報収集を行った.
2: おおむね順調に進展している
穿孔性貝類の出現初期の標本について解析を進めることができ,研究は順調に推移している.加えて,翌年度実施予定のヨーロッパにおけるフィールドワークについての準備を完了することができた.
穿孔貝の化石記録が古い南半球との比較のために,同時代の北半球の調査を行う.調査地はポーランド,英国,日本の中部ジュラ系―白亜系である.各国においてこれまで材化石の報告例がある海成層を中心に調査を行い,化石試料を採集する.その際,材化石のみならず,その近傍の母岩も含めて採取し,材の分解産物の有無の確認などができる試料を採集する.採集化石は,十分な産状観察を行った後に剖出を行う.試料の一部は切断および研磨を行い,材を中心として小片化した植物片の有無や有機物の分解によって晶出した自生鉱物の有無やその分布について調査を行う.
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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