研究課題/領域番号 |
16H05740
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
ジェンキンズ ロバート 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (10451824)
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研究分担者 |
長谷川 卓 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (50272943)
山田 敏弘 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (70392537)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 沈木群集 / 化学合成群集 / 有機物分解 / 竜骨群集 / ジュラ紀 / 白亜紀 / 中生代 / 古生態学 |
研究実績の概要 |
材穿孔性貝類がジュラ紀に出現した事による海洋にける大型の陸源有機物(陸上植物片)の分解過程および分解によって形成される遺骸依存生物群集の形成過程,そしてそれらの変遷を明らかにすることが本研究課題の目的である.本年度は主として材を産するポーランド,英国および日本においてジュラ系―古第三系の海成層を対象にフィールド調査を行った.また,脊椎動物遺骸に依存した生物(化石)群集についても研究を進め,中生代の海洋における陸源有機物および海棲脊椎動物の有機物塊の分解過程の総合理解に努めた. その結果,北半球の材穿孔性二枚貝の最古の記録となると考えられる化石をポーランドの中部ジュラ系から採取することに成功した.また,英国の中部ジュラ系からは穿孔性貝類の痕跡は見つからなかったもの,材化石周辺に密集した生物活動痕と糞塊を見いだし,穿孔貝が存在しない場合における当時の海底における材の分解過程を復元する試料を得ることに成功した.また,本邦の白亜系から産出したウミガメ化石を精査したところ,甲羅への貝類によると考えられる穿孔痕を見いだすとともに,沈木群集や鯨骨・竜骨群集,メタン湧水群集の構成種と同一または近縁の軟体動物化石が共産した.これは世界で3例目となる白亜紀の竜骨群集の報告となった.骨への穿孔性貝類の穿孔活動が竜骨群集の形成に寄与しているかについては今後の穿孔痕周辺の詳細な解析を進める. また,ジュラ紀―白亜紀における沈木群集をはじめとした化学合成群集の変遷を明らかにする上で欠かせない貝類の分類学的研究についても進展した.前期ジュラ紀に出現し,白亜紀に絶滅したと考えられるカスピコンカ類について,スペイン,ニュージーランド,日本から4新種を見いだし,記載するとともに,化石記録についてまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヨーロッパにおける海外フィールド調査に成功し,北半球における海洋での材分解過程を復元可能な良質な試料の採集に成功したのみならず,北半球最古となる可能性が高い穿孔性貝類を中部ジュラ系から発見することができたことは特筆に値する.産出層の詳細な年代については今後検討しなくてはならないが,現時点のデータを鑑みれば中期ジュラ紀には穿孔性貝類による材の物理的な小片化という分解プロセスが凡世界的に起きていたことを示す重要な証拠を手に入れることに成功した.また,海洋における大型有機物塊として材と比較される海棲脊椎動物遺骸に形成される生物群集についても複数の論文として出版でき,中生代における生物遺骸の分解過程と分解によって形成される生物群集の理解が格段に進んだ.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに採取した試料について,スラブや薄片を用いた詳細な産状観察とともに,炭素・酸素同位体比分析をはじめとした化学分析を行い,各試料について分解過程を復元していく.
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