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2018 年度 実績報告書

ジュラ紀の南半球でおきた沈木生態系の起源と初期変遷:深海での陸源有機物の分解革命

研究課題

研究課題/領域番号 16H05740
研究機関金沢大学

研究代表者

ジェンキンズ ロバート  金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (10451824)

研究分担者 長谷川 卓  金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (50272943)
山田 敏弘  大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70392537)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード沈木群集 / 化学合成群集 / 有機物分解 / 竜骨群集 / ジュラ紀 / 白亜紀 / 中生代 / 古生態学
研究実績の概要

材穿孔性貝類がジュラ紀に出現した事による海洋にける大型の陸源有機物(陸上植物片)の分解過程および分解によって形成される遺骸依存生物群集の形成過程,そしてそれらの変遷を明らかにすることが本研究課題の目的である.本年度は,これまでに採集した試料の解析を中心に進める計画であったが,新たにもたらされた情報をもとにフィールドワークを急遽展開することになった.共同研究を展開する海外研究者から,米国カリフォルニア州に分布する古第三系暁新統に材化石と随伴するコンクリ-ションの密集層準があるとの新情報を得た.海底に沈積した材は,その分解過程で炭酸水素イオンを生成し,海水中のカルシウムイオンと結合して炭酸塩鉱物の沈殿が起きると考えられている.新情報がもたらされた産地のコンクリ-ションは直径1m以上と巨大であり,顕著な分解によって生じたのかもしれず,本研究の要となる試料になるとの予想の元に,急遽フィールド調査を展開した.当該層準には多数の材化石および材化石に随伴する大小様々なコンクリ-ションがあった.材化石にはには多数の穿孔痕が見られ,一部に穿孔性貝類化石を認め,材穿孔性貝類の活動による材有機物の分解とそれに伴う炭酸塩コンクリ-ション化が起きていた可能性が高まった.さらに,この産地の近傍には同時代のメタン湧水もあったため,あわせて調査を行い,材の分解に伴って形成される還元環境と,湧水活動によって形成される還元環境とを比較して成立する生物群集が異なるかを検証する材料を得ることにも成功した.
また,北海道の上部白亜系産の材穿孔性貝類化石の探索を行い,本邦未報告の属種を含む試料を発見するに至った.今後,これら採集試料の解析を重点的に行い,本研究の目的である材穿孔性貝類による材の分解過程とそれによる環境・生物相変化を明らかにしていく.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

採集試料の解析については若干の遅れが見られる一方で,ジュラ紀以降の材穿孔性貝類およびその周辺堆積岩の採集については予定以上に発展している.本年度は新たに産地の情報が入った北米の古第三系暁新統において材化石と材を中心とする直径1m級のコンクリ-ションの採集を行う事ができた.また,材穿孔性貝類の飼育実験を新たに展開し,材の分解過程の詳細を化石と現世とを比較する基盤が整いつつある.よって,総じて順調に進展していると言える.

今後の研究の推進方策

これまでに採取した試料についての解析作業が遅れているため,本年度はこの解析を重点的に行う.スラブや薄片を用いた詳細な産状観察とともに,炭素・酸素同位体比分析をはじめとした化学分析を行い,各試料について分解過程を復元していく.また,2019年度は研究費交付の最終年度にあたるため,地質時代の化学合成生態系についての国際ワークショップを開催し,これまでの研究の総括および今後の進展を見据えた議論を内外の研究者を含めて実施する.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] California State University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      California State University
  • [国際共同研究] Institute of Paleobiology, PAN(ポーランド)

    • 国名
      ポーランド
    • 外国機関名
      Institute of Paleobiology, PAN
  • [雑誌論文] New and Mesozoic-relict mollusks from Paleocene wood-fall communities in Urahoro Town, eastern Hokkaido, northern Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Amano Kazutaka、Jenkins Robert G.、Kurita Hiroshi
    • 雑誌名

      Journal of Paleontology

      巻: 92 ページ: 634~647

    • DOI

      https://doi.org/10.1017/jpa.2017.137

    • 査読あり
  • [学会発表] 手取層群有峰層(上部ジュラ系)産無脊椎動物化石群集の竜骨群集の可能性2019

    • 著者名/発表者名
      笠原慎平,ジェンキンズロバート,山田敏弘,蜂矢喜一郎,松岡廣繁
    • 学会等名
      日本古生物学会第168回例会
  • [学会発表] 白亜紀オサガメ類Mesodermochelysに共生する穿孔性二枚貝類2019

    • 著者名/発表者名
      佐藤圭,ジェンキンズロバート
    • 学会等名
      日本古生物学会第168回例会
  • [学会発表] 九十九湾に設置した生物遺骸に生息する多毛類の分類と食性2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木碧,ジェンキンズロバート,小木曽正造,鈴木信雄
    • 学会等名
      日本古生物学会第168回例会
  • [学会発表] 北海道東部浦幌町の暁新世沈木群集中の中生代遺存種と最古の化石記録2018

    • 著者名/発表者名
      天野和孝,ジェンキンズロバート,栗田裕司
    • 学会等名
      日本古生物学会2018年年会
  • [学会発表] 鯨骨依存生物群集の形成過程における鯨骨内有機物の骨外への輸送システムの解明2018

    • 著者名/発表者名
      渡邊 壮,ジェンキンズ ロバート
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会2018
  • [学会発表] 議論と展望:過去と現在の化石化学合成生態系をつなぐ研究に必要なこと2018

    • 著者名/発表者名
      ジェンキンズ ロバート,渡部 裕美,延原 尊美
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会2018
  • [学会発表] Rimicarisの体表および消化管内にみられる熱水起源沈殿物の個体間・地域間変異2018

    • 著者名/発表者名
      彦坂 柾成,ジェンキンズ ロバート,チェン チョン
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会2018
  • [学会発表] New species of the Jurassic to Cretaceous seep-restricted bivalve Caspiconcha from Japan, Spain and New Zealand2018

    • 著者名/発表者名
      ジェンキンズ ロバート,Kaim Andrzej,疋田 吉識,Kiel Steffen
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合大会2018
  • [学会発表] Decaying process of marine vertebrates: How the whale- and sea turtle-fall communities are established?2018

    • 著者名/発表者名
      Robert G. Jenkins, Midori Suzuki, So Watanabe
    • 学会等名
      5th International Palaeontological Congress
    • 国際学会
  • [備考] ジェンキンズ研究室ウェブサイト

    • URL

      http://www.geobiology.jp/

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公開日: 2019-12-27  

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