研究課題/領域番号 |
16H05741
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
森下 知晃 金沢大学, 地球社会基盤学系, 教授 (80334746)
|
研究分担者 |
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
水上 知行 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (80396811)
針金 由美子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ付 (90569360)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 超苦鉄質岩 / 太古代 / 海洋プレート / 大陸形成 / プレートテクトニクス / マントル |
研究実績の概要 |
西グリーンランド南部地域の30億年および38億年前に形成された地質帯中の超苦鉄質岩石およびその周囲の岩石群について調査研究を行っている 研究成果は以下の通りである。 1)前年度までに得られた試料の解析を進め(主に30億年前地質帯中の超苦鉄質岩石類の解析),岩石の多様性に関する実態(鉱物量比,鉱物化学組成,全岩化学組成)について検討した.特に,周囲の変成岩近傍の岩石について検討し,周囲の岩石群に関しては周囲の変成岩由来の流体・メルトの影響を受けて岩石が加水,アルカリ元素の増加,シリカ含有量の増加といった顕著な鉱物・化学組成的変化を受けていることが明らかとなった.さらに、新たにチタニウムを含む単ヒューマイト(鉱物)を含む岩石が存在することを明らかとし,この岩石が蛇紋岩化したカンラン岩からの脱蛇紋岩化によって形成された可能性を明らかにした(論文準備中).また,クロムスピネルが農集したクロマイトにおいても鉱物化学組成的に結晶内に鉱物類帯組成が見られるものと,均質なものが存在することを明らかにし,岩体の中で不均質に流体組成の付加の影響を受けていると解釈した(Guotana et al., 論文投稿中). 2)38億年前地質帯に産するカンラン岩体の野外調査を行い,以下のような成果を得た 40億年の形成年代をもつクロミタイトとその周囲の岩石群の観察から,これらの岩石群も周囲の変成岩に由来すると思われる流体の付加の影響を受けていることが推察される.また,地殻物質とカンラン岩の相互作用を強く受けていると思われる露頭について詳細に検討を行った. 3)現在の海洋プレートと比較を行うため,世界的に有名なオマーンオフィオライト,ミャンマーの点在するオフィオライト的岩石群,フィリピンのオフィオライトに関する野外調査を行った
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存岩石試料の解析について:2017年度までに採取された岩石試料に関しては基礎的な岩石記載・化学分析(主要元素分析)を終えることができた.これらの結果から,30億年前カンラン岩体の多様性とその要因に関して,本研究の最初の懸念事項であった周囲の変成岩からの鉱物的・化学的影響の実態が明らかになりつつあり,本研究の最大の目的である太古代に形成されたカンラン岩の特徴への糸口が見つかりつつある.一方で,蛇紋岩化(加水したカンラン岩)の脱蛇紋岩化(脱水カンラン岩)の存在という新しい観察・解釈が進んだことにより新たな岩石成因論への展開が必要であるが,後述するように,新たに行った38億年前地質帯との比較を行う上で重要な情報となった. 研究発表:上記の成果に関しては,少なくとも2本の独立した研究論文として発表を進めている. 新たな野外調査の成果:30億年前の研究成果を踏まえて行った野外調査では,この地帯に産する超苦鉄質岩石類の多様性をほぼとらえる試料採取ができた.現在,この試料の解析を行っており,30億年前試料と比較することで,それぞれの類似性(周囲の変成岩による物質改変の影響)や相違性(38億年前地質帯で特徴的に観察される鉱物組み合わせの発券など)がわかってきており,今後は,これらの違いこそが太古代のテクトニクス解明へとつながることが期待される. また,既存研究ですでに報告されている場所について改めて研究を行ったところ,地殻物質とマントル物質の相互作用を強く受けた領域である可能性が出てきたため,太古代の大陸性地殻の形成に超苦鉄質岩石がどのように関与しているのか?・していないのか?を検討する必要があるが,この岩石群が本研究のカギの一つとなる.
|
今後の研究の推進方策 |
30億年地質帯中の超苦鉄質岩石のとりまとめ:チタニウムを含む単ヒューマイトの発見とその意義,クロミタイトの多様性とその意義に関する独立した研究論文を発表する. 38億年前地質帯中の超苦鉄質岩石群に関しては引き続き岩石試料の解析を進めていく.特に,超苦鉄質岩石群は複雑な履歴(加水ー脱水―加水ー炭酸塩岩化)を受けている可能性があるため,何らかの手法を持ちて形成年代,イベント年代を決定したい.一つの方法としては,年代決定に有効なジルコンを含む岩石群の解析である.特に,地殻物質の交代作用を受けている岩石群に関しては,ジルコン発見の可能性があるため,集中的に検討を行っていく. 主要な岩石群に関しては微量元素組成,同位体組成を測定し,周囲の変成岩の影響をより定量的に(単なる脱水による水を主体とする流体の影響なのか,メルトとして付加したのかなど)検討する.これらは大陸地殻の形成と関連していることが期待される. 太古代の超苦鉄質岩石と最近のオフィオライトなどのマントル起源物質と比較することで,太古代カンラン岩の特徴とその違いについて議論していく.
|