研究課題/領域番号 |
16H05742
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
門馬 綱一 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (30552781)
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研究分担者 |
長瀬 敏郎 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (10237521)
ジェンキンズ ロバート 金沢大学, 地球社会基盤学系, 助教 (10451824)
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
井尻 暁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (70374212)
宮脇 律郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 部長 (80290865)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シリカクラスレート鉱物 / メラノフロジャイト / メタン湧水 |
研究実績の概要 |
シリカクラスレート鉱物とは,結晶構造中にメタンなどの天然ガス分子を含む鉱物である。これまで,産出の極めて稀な鉱物と考えられてきたが,メタン湧水環境において普遍的に産出する可能性が高い。堆積物中の有機物は,地中深くまで運ばれると地熱により分解されてガスとなり,断層や泥火山などの地質構造を通して冷湧水とともに地表(海底)に湧出する。海水中に湧出したガスは微生物に酸化され,最終的には二酸化炭素として再び大気中に放散される。このような地球規模での炭素循環過程を解明する手掛かりとして,シリカクラスレート鉱物は新たな物証を与える。本研究はシリカクラスレート鉱物から古代のメタン湧水環境に関するより詳細な情報を得ることを目的とし,極東ロシア サハリンをモデル地域として研究を行うものである。 これまでにサハリン南西部の3ヶ所から、シリカクラスレート鉱物の一種、メラノフロジャイト、およびその仮晶(結晶の形だけを残し,変質したもの)を見出しており、平成30年度は、未調査であったクリリオンスキー半島南東部の調査を行なった。調査の結果、現地ではシリカクラスレート鉱物を確認することはできなかったが、これまでの調査でシリカクラスレート鉱物との共生が認められた黄鉄鉱や霰石などの特徴的な鉱物集合体が広範囲に渡って複数ヶ所で観察された。また、前年度に採取したメラノフロジャイト試料について、単結晶X線構造解析、ラマン分光分析、包有ガスの定量分析とその炭素同位体に関する予備的な測定などの分析を進めた。分析結果についてはオーストラリア メルボルンにて行われた国際鉱物学連合の第22回大会にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、クリリオンスキー半島の南西側2ヶ所と南東1ヶ所の計三カ所の調査を行い、前2ヶ所からシリカクラスレート鉱物の一種であるメラノフロジャイトを見出した。それらの試料の単結晶構造解析、ラマン分光分析、同位体測定などを順調に進めている。また、サハリンにおける地質調査の知見を参考にした国内の対比調査においても、シリカクラスレート鉱物の痕跡を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の南東部の調査試料の大半は、未だロシアの共同研究先にあって、国内での詳細な分析が行えていないため、次年度はその精査を行う。また、シリカクラスレート鉱物発見の重要な手がかりである石英の仮晶(別の鉱物の結晶を石英が置き換えたもの)の形成に関連し、国内外の様々な石英仮晶との対比研究を行う。その結果を踏まえ、最終年度にはサハリン産シリカクラスレート鉱物と、そこから読み取れる地質環境について論文にまとめる。
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