研究課題/領域番号 |
16H05746
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
原 忠 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (80407874)
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研究分担者 |
末次 大輔 佐賀大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30423619)
中澤 博志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 研究員 (20328561)
張 浩 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (90452325)
Hemanta Hazarika 九州大学, 工学研究院, 教授 (00311043)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛇籠 / 擁壁 / 斜面崩壊 / ネパール地震 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、過年度実施した蛇籠擁壁に対する現地調査で得られた知見に基づき、下記の3項目に取り組んだ。 (1)蛇篭擁壁を対象とした詳細な現地調査:前年度調査で選定された蛇籠被害の顕著なモデル地点(アラニコ・ハイウェイ沿線)を対象に中詰材の積み方や形状、蛇籠擁壁の形状や崩壊斜面との関係を把握するための測量を行い、模型実験でモデル化する蛇篭の形状を特定した。さらに、斜面崩壊の形態と蛇籠被害との関係を把握するため、擁壁背後地盤を対象とした簡易動的コーン貫入試験、小型原位置一面せん断試験を行い、地盤の成層や連続性、擁壁背後地盤のせん断特性を定量的に把握した。 (2)ネパール国における道路法面の崩壊対策と蛇篭の利用形態に関する資料の収集:海外研究協力者(トリブバン大学教員)の支援を得て、ネパール国における斜面崩壊対策の設計指針、施工例を調査し、蛇籠の活用の歴史や擁壁工としての蛇篭の利活用に関する技術指針を整理した。さらに、上記の現地調査において、河川護岸や水制工、砂防ダムなどに活用された蛇篭の利用実態を調査、活用形態を取りまとめた。 (3)室内三軸実験による中詰材のせん断特性の評価:過年度に引き続き、中詰材の排水せん断(CD)試験を行い、数値解析に用いるせん断パラメータを同定した。また、圧密・せん断過程で生じる粒子破砕が排水せん断強度に及ぼす影響を、粒子形状(円礫、角礫)や軸ひずみにより整理した。 (4)小型模型実験に基づく蛇篭の安定性の評価:現地調査で把握した蛇篭擁壁をミニチュアモデルで再現し、蛇籠擁壁の変形抵抗に及ぼす蛇籠同士の緊結や中詰材の充填密度の影響を小型模型実験で評価した。小型模型実験は、現地で採用例の多い3段直立積み擁壁中段を平面ひずみ状態で圧縮し水平載荷圧力と水平変位の関係で整理した。一連の実験から、隣接する蛇籠同士の擁壁の変形抵抗を高める効果が大きいことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現地調査や資料収集は、JICAネパール事務所の協力を得ながら研究分担者、研究協力者、現地学術機関(トリブバン大学)が協働しながら効率よく実施し、多くの成果を得ることが出来た。定期的な協議の場を持つことで研究の進捗が確認できたことで研究分担者、協力者との意思疎通や相互理解が深まり、学会等で複数の成果を公表することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は平成29年度までの実施内容を総括しつつ、蛇篭擁壁の地震時安定性の検証を深度化し、ネパール国の現地の実態に即した防災技術の具体策(ガイドライン)を提示する計画である。具体的には下記の3項目を実施する。 (1)中詰材の室内試験と現地調査等に基づく蛇篭擁壁の地震時安定性の検証:昨年度までに実施した蛇篭の中詰材に対する室内要素試験を高度化し、繰返しせん断に対する抵抗性を室内三軸試験から求める。さらに、一連の現地調査や室内試験結果をパラメータとした裏込土の変形と蛇篭の安定性を評価するための数値解析を行い、地震時の被災メカニズムの推定や耐震性を評価する。 (2)耐震性を有する蛇篭擁壁に対する設計ガイドラインの作成:地震時の道路法面崩壊対策としての蛇篭擁壁に対して、現地の技術者が利用しやすい簡易な設計ガイドラインを作成する。本研究では、特に中詰材のせん断特性や施工性を重視し、模型実験と再現解析で耐震性と妥当性が確認された中詰材の粒子配列に力点を置いた耐震性蛇籠擁壁を試設計する。設計ガイドラインは、一連の成果に基づき、事前調査計画と調査手法、設計用地盤定数の設定、蛇籠の要求性能と留意点、簡易設計計算手法、蛇籠の施工方法と修復法などの観点でまとめ、現地で適用できる簡便な設計・施工スキームを分かりやすさを重視しながら提示する。 (3)海外研究協力者等との意見交換:ネパール国研究協力者を交えた意見交換会をネパール国にて開催し、ネパール国で活用例の多い蛇籠構造物の耐震性や安定性を向上させるための解決策を協議する。報告書は現地政府機関、NGO等に提供することで研究成果を対象国に広く社会に還元し、両国間の山地道路被害の軽減技術に関する将来展望を含めた意見交換を加速化させる。
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