研究課題/領域番号 |
16H05750
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (80634435)
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研究分担者 |
糠澤 桂 宮崎大学, 工学部, 助教 (20725642)
大村 達夫 東北大学, 工学研究科, 教授 (30111248)
八重樫 咲子 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (30756648)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | デング熱 / ベクター感染症 / 生態モデル / ウイルス / 気候変動 |
研究実績の概要 |
【課題1 フィールド調査と蚊の採集】マニラでネッタイシマカ成虫を採取した。成虫は電動採捕機で採取し,採取時間を記録して単位努力量当たり捕獲数(個体数/日)を評価した。採取した約500個体の成虫はRNA安定化溶液(RNAlater)に入れて現地協力機関で冷凍保存した。 【課題2 デングウイルスの空間伝播動態の評価】デング流行期にマニラ近郊のターラック市で採取したネッタイシマカメス成虫のウイルスRNAの配列を解析した。媒介蚊の解析には,患者家庭からの個体と共に非感染家庭からの個体も使った。患者と蚊のRNAから,デングウイルスの4つの血清型に特異的なプライマーによるRT-PCRと増幅を行い,PCR産物の配列を解読した。解析した359蚊個体から10個体(=2.8%)のデング陽性個体が検出された。 【課題3 共生細菌ボルバキアによる蚊のデング感染抑制の検証と共生率の空間分布調査】メトロマニラから採取した672個体のネッタイシマカ成虫からボルバキア特異的な wsp 遺伝子を PCR 検出した結果,113 個体(16.8%)から検出された。これらボルバキア陽性個体はマニラ全体に広く生息していることが確認された。 【課題4 気候変動下のデングリスク予測モデルの開発】 メトロマニラ都市圏内の660行政区の水文特性と土地利用様式に基づいて各行政区のデング罹患率(感染者数/人口)を予測する機械学習モデルを作成した。決定係数0.90という高い精度でデング罹患率の空間変動が説明された。モデルの重要な説明変数の一つとして降水強度が選択された。また,2009年から2013年におけるマニラの気象水文変数(降水量,気温,湿度,洪水エリア等)とデング罹患率の経週変動の関係性を説明する機械学習モデルも作成した。その結果,4~20週のラグタイムをおいて,気象水文変数がデング罹患率の時間変動を説明することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4つの個別課題共に,研究計画どおりのスケジュールで進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は以下のように進める予定である。 課題1:引き続き蚊の調査を継続する。 課題2:得られたウイルスの遺伝情報からデングウイルスの空間伝播動態を評価する。 課題3:ボルバキア陽性個体が多い地域ほどデングウイルス陽性個体が少ないという仮説を検証する。 課題4:デング熱媒介蚊の生息分布を環境変数から説明する生態モデルを作成する。 課題5:特にボルバキア陽性蚊の放虫プログラムを念頭において,効果的なデング抑制計画の提案を行う。
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