研究課題/領域番号 |
16H05753
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西村 幸夫 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20159081)
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研究分担者 |
森 朋子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00746480)
窪田 亜矢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (30323520)
中島 直人 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30345079)
黒瀬 武史 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (50598597)
中島 伸 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (50706942)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歴史的環境 / 震災復興 / 町並み保全 / 伝統的建造物群保存地区 / 制度設計 / ネパール |
研究実績の概要 |
2015年4月にネパールで発生した地震は、カトマンズ盆地の世界遺産とバッファーゾーンを含む歴史都市全体に被害をもたらした。一方、ネパールの文化財保護制度は、王宮や寺院建築、遺跡といった「点」としての文化財を対象にし、歴史都市を構成する集落や町並みといった「面」としての「歴史的環境」にまでは至っていない。震災から二年を目前に、この無防備な「歴史的環境」は確実に変貌している。「歴史的環境」保全に対する緊急対応と、恒常的な国内法整備の二段階対応を早急に検討する必要があり、本研究はそのための計画論的方法を明らかにすることを目的としている。また、本研究はおおきく次の3つの研究部門から構成されており、いずれのテーマについても、理論の構築とケーススタディを補完させ合いながら研究を進めている。 ①復興と保全を必要とする「歴史的環境」を明らかにする研究 ②「歴史的環境」の復興と保全の枠組みに関する研究 ③「歴史的環境」の復興と保全に向けたネパール法制度への導入方法に関する研究 平成28年度は、現地調査、カトマンズ盆地内の先駆的な地方自治体技術者とのワークショップ開催、考古局等主要行政へのヒアリング調査と文献調査を進め、①の研究部門を軸に、②の研究部門の導入調査を行ない、「歴史的環境」の抽出と必要となる保護に対する枠組みと、「歴史的環境」の復興と保全に向けた緊急・恒常的な二段階の制度設計に向けた知見を得た。同時に、日本国内において、災害復興を遂げた先駆的な伝統的建造物群保存地区(黒島地区、佐原地区、真壁地区、新川・田籠地区)を調査し、復興と保全を両輪とする制度設計への知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由:文化庁・東京文化財研究所のカトマンズプロジェクト(平成28年度継続)、ユネスコのルンビニプロジェクトも順調に進み、特にカトマンズにおける「歴史的環境」に関する知見は、プロジェクトと本研究との相乗効果がうまれ、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、①の研究部門に関した各メンバーの研究は平行して進めながらも、研究の主力を次第に②の研究部門である法的規制の導入可能性論へ移行させる。並行して、①の研究部門に関しては、研究がまとまり次第、研究論文として発表するのみならず、現地での関係者に向けた成果報告や地域住民向けのワークショップを開催するなど、ひろくネパールの方々に成果を還元するとともに、カトマンズにおける今後の復興において、歴史的環境保全に向けた世論醸成を目指す予定である。 また、レンガのみならず木材で建造した形跡が発見されたルンビニでは、埋蔵文化財を「歴史的環境」と捉え、保全及び整備することが必要となる。多数の先行事例をもつ日本に、海外の研究協力者である考古学者等を招聘し、埋蔵文化財にも射程を広げた「歴史的環境」保全に関する専門的な議論を深める予定である。
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