研究課題/領域番号 |
16H05754
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 滋 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60139516)
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研究分担者 |
川原 晋 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (10367047)
古川 尚彬 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任助教 (80454106)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フエ / 皇帝陵 / 歴史的環境 / エコツーリズム / 世界遺産 / 水利システム / 遺跡保存 / 風水思想 |
研究実績の概要 |
本研究は,ベトナム・フエの阮朝歴代皇帝陵とその周辺の水田が一体となった環境を当該地域の特徴的な歴史的環境と捉え,そのマネジメントの手法を提示することを最終的な目標としている.いわゆる構造物としての遺跡の管理を担当するフエ遺跡保存センターだけではなく,周囲の水田を日常的に管理している集落住民らの協働によってはじめて,当該地域における歴史的環境を持続的にマネジメントすることが可能となるが,そのマネジメントのベースとなるのは集落の定住である. 初年度である平成28年度は,そうした周辺集落が水田耕作に利用する水利システムについて,集落住民及びフエ遺跡保存センターとの共同調査を実施し,歴史的水利環境の特徴を詳細に明らかにした上で,現在抱える問題の特定と原因の考察を重点的に行った. 具体的には,乾季と雨季に現地調査を実施し,それぞれの季節における皇帝陵のエリア内外に造成された水利システムの実態と特徴,各水利施設の役割について詳細に調査した.そして年度末には,調査結果をフエ遺跡保存センターの所長他幹部スタッフへ報告し,遺跡周辺の水利システムとそれによって支えられる文化的景観に関するさらなる調査の必要性,景観保全に向けた取り組みの必要性について共通理解を深めることができた. 当初計画では,集落の定住支援の一つの取り組みとして,住み替えや建て替えなどの住環境改善の方法の検討を予定していたが,研究を開始するにあたり,研究参加者及び,海外協力機関との意見交換を行った上で,皇帝陵の周辺に配された水利システムを利用した営農活動を支援することが,歴史的環境の管理とその担い手支援の方法として最も重要であるとの意見で一致し,予算の制限もあることから計画の工程を上記のように見直すこととなった. 尚,住環境改善の方法に関しては,次年度以降,初年度の結果をふまえた上で検討を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの大学の研究者と2つの大学の大学院生を中心とした広範囲の専門領域からなる研究チームが、連携研究者、研究協力者そして学生の極めて緊密な協働体制の元で、研究が推進されている。また、現地のカウンターパートであるフエ歴史保存センターもファンタンハイ所長の下での研究者との協働体制、対象集落のリーダー層などの全面的な研究協力のもとで、順調に研究が進められている。 また、当初、想定していた以上に伝統的環境マネジメント技術が洗練されていて、さらなる調査が必要なことが明らかになった。これに関して集中的な調査研究活動を進めることができ、観光などの地場の産業振興の検討も、多様に展開する可能性が見えてきている。 このような状況のもとで、適正技術としての伝統的な環境マネジメント技術に関してさらに精緻な調査を行うことにするなど研究計画の一部組み換えを行うが、研究目的の達成のためにより良い方向であり、概ね研究は順調に進展していると確信している。
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今後の研究の推進方策 |
皇帝陵及びその周辺集落と一体となった環境マネジメントシステムに関して本年度の成果をもとにして得られた仮説的枠組みを検証するための調査を、フエ遺跡保存センター及び現地の集落のリーダー層との協力のもとで進め、その全体像を明らかにする。 この成果を、エコツーリズムのための資産として地元に還元し、環境教育等にも役だ出せるため、遺跡保存センターのガイド、集落住民などを対象とした準備的ワークショップを夏季に行なう。またそのための、教育・広報資料を作成してアクションリサーチを推進する。 これらの成果を皇帝陵とその周辺を含めた歴史資産の良好な保全政策を地元が推進することができるように、地元の州政府などの意思決定者、行政担当者そして研究者を対象としたセミナーを行い、意見交換を進め最終年度の研究に反映させる。 以上を通して研究目的の達成を図る。
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