研究課題/領域番号 |
16H05758
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
江面 嗣人 岡山理科大学, 工学部, 教授 (00461210)
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研究分担者 |
西山 徳明 北海道大学, 観光学高等研究センター, 教授 (60243979)
八百板 季穂 北海道大学, 観光学高等研究センター, 特任准教授 (30609128)
大森 洋子 久留米工業大学, 工学部, 教授 (30290828)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フィジー共和国レブカ / ベランダコロニアル / 戸建住居 / ブレ / ベランダ室内化 / 痕跡調査 / 変遷図 / 生活変化 |
研究実績の概要 |
本研究はフィジー諸島共和国オバラウ島レブカにおいて、集落及び町並みを構成する住居を中心とする歴史的建造物について、その間取、意匠、構造などの特徴の成立及び変遷を、実測調査に基づく復原的手法によって実証的に明らかにするものである。 レブカの住宅は周囲に庭をもち主として高台に建つ一戸建ての住宅(戸建住宅)と通りに面して建つ町家に分けられるが、初年度はレブカにおいて最も特徴があり、建築史学的にも価値があると考えられるベランダコロニアル形式の戸建住宅についての調査を主として行った。また、一部に町家の実測調査を行った。 実測調査は住宅54棟、町家10棟について行い、①現状平面図、②現状断面図、③現状配置図、④復原平面図(変遷図を含む)を作成した。また、構造と部材に関する新たな調査、建物の写真撮影、各住宅の沿革、生活の変化等に関する聞き取り調査などを行った。 調査によって、当初の予想通りに、戸建住宅についてはベランダから室内に変化する過程が痕跡調査等によって実証的に明らかになり、メインストリートに建つ町家についても、倉庫から併用住宅に変わる過程が一部明らかになった。ベランダコロニアルの戸建住居の起源はフィジーの伝統的住居である「ブレ」とヨーロッパの植民地からもたらされた「バンガロー」形式の折衷様式と考えられ、1室の身舎に開放のベランダが回ったものであったと考えられた。調査によって実証的に、ベランダが徐々に室内化される過程が明らかになり、身舎も区切られて個室化し、廊下が造られるなど、生活の変化と共に発展する様子が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1次調査によって、調査の望まれる歴史的建造物が120棟存在することが判明した。このうち住宅58棟が含まれる。これまで九州大学等により歴史的建造物43棟が調査され、本研究において64棟が調査を完了している。そのうち住宅は54棟調査し、町家10棟を調査した。今回の調査で住宅においては未調査が4棟となり、本研究の主たる目的である住宅についてはほぼ調査を完了しつつあり、28年度に計画した実測調査の予定は、おおむね順調に進展しているといえる。 景観調査については、保存地区全体の歴史的な景観要素となる保存すべき物件等の調査を進めており、ほぼ半分が完了した状況である。また、意識調査については、担当者に地区を調査してもらい、住民の状況等を把握し、アンケート調査の項目について決定し、29 年度に地元の住民に訪問調査をしてもらうように手配した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の実測調査は、これまで九州大学等で調査した物件については復原について再確認する必要があり、住生活などの使い方についてさらに詳しい調査を進める必要がある。また、ビーチストリートの町家や公共建築などの調査が残っており、今後の調査対象とする。フィジー周辺地区の伝統的住居についても調査を進めたいと考える。 ただし、当初計画していた内容は、予算の大幅な削減(60%に縮小)によりすべてを行うのは不可能と考え、国内の伝建地区の比較調査は行わないこととし、29年度以降に予定していた景観調査や地区保存の意識調査についても、当初の計画よりも規模を縮小して進めたいと考えている。意識調査については全住民を対象とするのではなく、伝統的建造物に住んでいる、または使用している住民を対象に訪問調査で行うこととした。 調査終了後も調査が何らかのかたちで進められるように、フィジーの南太平洋大学の建築学科を訪問して、連携体制が組めないかを調整することとした。
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