研究課題
交付申請書に記載した研究目的および研究実施計画に沿って、1.平成28年度の研究調査に関する準備会議を電子メール会議として実施して運営委員会を設置した。その後、2.南湖盆南岸沖のバイカル湖で最古堆積物が存在する水域における物理探査候補地点の決定をおこない、3.平成28年6月に同水域において物理探査を実施した。その後、4.物理探査データの解析によって、同水域において初めてとなる湖底3次元マップの作成に成功した。その後、5.湖底3次元マップとこれまでの文献情報等を基にして、平成28年度の湖底表層コア採取候補地点の選定をおこない、6.コア採取フィールド調査の計画(調査研究作業内容、調査船の傭船日程、事前準備の日程、各機関からの参加者等)を決定し、7.平成28年8月21日から8月30日に、海外共同研究者および国内共同研究者の参加による調査船を用いた湖底コア採取に基づく研究調査を実施した。その結果、南湖盆南岸沖では初めてとなるメタンハイドレート(MH)存在サイト(合計4箇所)の発見に成功した。採取されたMHの結晶構造はⅠ型とⅡ型であった。バイカル湖において、中央湖盆ククイキャニオン域以外で結晶構造Ⅱ型のMHが発見されたのは、本研究調査域である南湖盆南岸沖が初めてである。一方、比較研究調査の中央湖盆においても、平成28年度に新たに4箇所のMH存在サイトの発見に成功した。採取後のコア試料は、研究実施計画に沿って調査船内にて直ちに前処理および土質試験を実施し、サブサンプリングした試料は化学・物理解析に供した。
2: おおむね順調に進展している
申請した研究計画および平成28年3月にロシア連邦イルクーツク市にて実施した準備会議および電子メール会議に沿って、1.研究調査に関する運営委員会を設置し、2.文献情報および予備調査結果を基に平成28年度の物理探査候補水域およびコア採取候補水域の決定をおこない、3.フィールド調査計画案(調査船傭船日程、事前準備日程、参加者、作業内容等)について、海外共同研究者および国内共同研究者と会議のうえ決定した。調査に用いた調査船と湖底堆積物コアを採取するための重力コアラーも、研究計画に沿って準備をおこなった。計画に沿って調査を実施した結果、南湖盆南岸沖において初めてとなるメタンハイドレート(MH)存在サイトを発見した。比較調査域としての中央湖盆においても新たに4箇所のMH存在サイトを発見した。物理探査解析結果、採取した堆積物コア試料およびMH試料の測定結果からは新たな知見が得られた。これらの新規知見を学術論文誌および国内外の学会にて研究発表をおこなったことから、交付申請書の目的に対する達成度はおおむね順調といえる。
交付申請書の研究実施計画に沿った調査において南湖盆南岸沖で発見したメタンハイドレート(MH)サイトでは、結晶構造がⅠ型のMHと構造Ⅱ型のMHが半径0.2 km程の狭い範囲に共存していることを明らかにした。バイカル湖において中央湖盆ククイキャニオン域以外で結晶構造Ⅱ型のMHが発見されたのは南湖盆南岸沖が初めてである。構造Ⅰ型と構造Ⅱ型が狭い範囲に共存している事実は、特異的なMH生成環境を示唆する。今後は、これらのMHサイトの水域において詳細な物理探査をおこない、湖底状態だけではなく湖底深部情報の取得を試みる。その上で、得られた湖底堆積物コア試料を交付申請書に沿って化学分析(ガスおよび水)、物理分析(結晶解析)および土質分析に供し、物理探査情報と合わせて考察を試みる。本研究代表者らがこれまでのバイカル湖中央湖盆ククイキャニオン泥火山等で実施した研究調査で採取したMH含有コアの分析結果との比較を通して、南湖盆南岸沖の最古堆積物存在水域のMH含有コアの特徴の抽出をおこなう。堆積物コア中および間隙水中での水およびガスの移動および混合とMH産状との関係より深部構造の把握を試みる。
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Geography and Natural Resource
巻: 5 ページ: 109-116
DOI: 10.21782/GiPR0206-1619-2016-5(109-116)