研究課題/領域番号 |
16H05763
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 実 京都大学, 理学研究科, 教授 (20227292)
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研究分担者 |
布施 静香 京都大学, 理学研究科, 助教 (30344386)
高山 浩司 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60647478)
池田 博 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (30299177)
藤川 和美 公益財団法人高知県牧野記念財団, その他部局等, 研究員 (60373536)
米倉 浩司 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 植物研究室, 研究員(専門) (00302084) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植物の種多様性 / 植物の南北移動史 |
研究実績の概要 |
2019年度は、2回の海外植物調査を行うことができた。1回目は、中国科学院昆明植物研究所との共同で、6月に中国雲南省南部の西双版納で調査を行った。モンラーの標高約560mの熱帯雨林から、モンハイの標高約1700mのブナ科を中心とした熱帯山地常緑広葉樹林まで、標高差約1140mの範囲内の11ヶ所の植物を調べ、34科58属の維管束植物を同定し、合計137点のさく葉標本を作製した。2回目は、タイの国立公園―野生生物―植物保全局のBKFとの共同で、11月にタイ中部のサラブリで調査を行い、6科12属の被子植物を同定し、合計27点のさく葉標本を作製した。 今年度は、特にヤマノイモ科ヤマノイモ属に関して大きく進展した。ヤマノイモ属は熱帯域を中心に約630種を含む大きな属であるが、本研究では多くのアジア産種を解析に加えることに成功し、合計183種(全属の約29%)の大規模分子系統樹を構築した。さらに、綿密な形態観察を行い、この大規模分子系統樹に基づいて詳細な形態形質の進化を推定し、初めて分子形質を使ってヤマノイモ属の分類を再検討した。その結果、ヤマノイモ属に2亜属20節(4新節と1新ランクを含む)を認め、ヤマノイモ属の多様性の構造を明らかにした。 さらに、コショウ目の大きな(種数が多い)3属であるウマノスズクサ属 (約450種)、コショウ属 (1050-2000種)、サダソウ属 (1000-1600種) の新世界と旧世界の間の移動の歴史に関して、ウマノスズクサ属では過去に何回か移動が起こったと考えられる一方、コショウ属とサダソウ属では第三紀中新世に新世界から旧世界への移動がただ一度だけ起こったと推定できた。 また、ツユクサ科、キンバイザサ科、クサスギカズラ科のジャノヒゲ属やPeliosanthesなどのさく葉標本や試料も多く集め、重点的に解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2019年度は、当初の計画では、海外植物調査は中国のみで行う予定であったが、加えて、タイ中部サラブリにおいても調査を行うことができたため。中国では、2017年度に調査したシャン州(ミャンマー)の北東側に隣接する西双版納で調査を行うことができ、植物の南北移動の足跡をより連続的に捉え得る試料収集が可能になった。サラブリでは、2016年度に行なったタイ中部のナコーンナーヨック調査の補充試料を収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度が本研究の最終年度に当たるため、タイ北西部での海外植物調査を進める予定である。タイ北西部での植物調査は、本研究の過去4年間に蓄積したデータによって、本研究の目的を達成するために重要であることが分かっている。その後、中国横断山脈~マレー半島の被子植物の種多様性の解析と南北移動の歴史解明のための解析に移る予定である。海外植物調査の時期については、現在、検討中である。
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