研究課題
シャジクモ(Chara braunii)は体長が5~20cm程度の比較的大型の淡水藻類である。藻体は主軸に枝が輪生する構造を持ち、この輪生枝の節部に生殖器官が形成される。藻体が成熟すると造精器から精子が放出され、生卵器内の卵細胞との受精が行われると卵胞子(接合子)が形成される。シャジクモは南極大陸を除く世界各地に分布し、地域変異が多く、様々な水環境に生育している。シャジクモの種内系統に関する研究は主に日本の材料を用いた研究しか行われておらず、現在の分布様式の成立過程と地域変異/生態的多型の進化過程は明らかにされていない。平成28年度は、新たに国内外の多様な生育環境から多数の個体を採集し、単藻培養株を確立し、葉緑体DNA(rbcL遺伝子、atpB-rbcL遺伝子間領域)に基づく分子系統解析と同一培養条件下での表現型解析を実施した。また、我々の先行研究によってゲノム配列が明らかになっている生態型/系統の異なる2系統(主に水田に生育する集団に属する個体と主に湖沼に生育する集団に属する個体)を用いて交配実験を行い、得られた外交配個体の表現型解析と遺伝的多型解析を実施した。海外の集団(タイ、オーストラリア等)を含めた分子系統解析の結果、日本のシャジクモは単系統群を形成し、海外の集団とは系統的に離れていた。また、複数系統を用いた表現型解析の結果、主軸の量的形質と生態型/系統の違いに相関がある可能性が示唆された。一方、異なる系統間(水田型系統、湖沼型系統)の交配実験の結果、片方の親株に類似した形態的形質を持つ個体、両親の中間の形態的形質を持つ個体等、様々な形態的形質を持つ外交配系統が得られた。
3: やや遅れている
サンプル収集の難しさから、遺伝的多型解析の進行がやや遅れている。しかし、単藻培養株を確立できた複数の系統に関しては、同一培養条件下での表現型解析を行い、主軸の量的形質と生態型/系統の違いに相関がある可能性が示唆された。
今後は、最新のシャジクモの生育分布情報を収集するように努め、様々な淡水環境に生育する多くの個体の採集を進め、単藻培養株の確立、表現型解析、遺伝的多型解析を実施していく予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件)
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