研究実績の概要 |
(1) キューバにおいてこれまでに得られたサンプルのDNA配列をもとに系統樹を作成し、Mesquiteを用いた解析によって、森林内部の低温環境側から開放高温環境側への適応進化が4つのクレードで独立に起きていることが推定された。今回、キューバにおいて、森林低温種3種、開放高温種5種を採集し、RNAサンプルを得た。このキューバのアノールトカゲの高温環境への適応進化を可能にした遺伝的変化を解明するために、高温環境へ進出した種において、共通して正の自然選択を受けた遺伝子の推定を試みた。まず、4つのうち2つのクレードで、高温環境と低温環境のそれぞれに生息する種(高温種2種、低温種3種)のコード領域の配列をゲノムリシークエンス(Anolis isolepis、Anolis allisoni)あるいはRNA-seq(A. sagrei, A. mestrei, A. allogus)により決定した。その後のPAMLによる高温環境へ適応した種で共通に正の選択を受けた遺伝子の推定結果を示し、PAMLによる推定の結果、高温環境への適応した種で共通に正の選択をうけた13の遺伝子が検出された。13の遺伝子のうち、高温2種で共通のアミノ酸置換をうけた遺伝子としてCOL7A1が検出された。これは、皮膚の構成要素として重要なコラーゲンの高温による変性を防ぐことが考えられた。 (2) キューバから高温種であるA.sagrei, 低温種であるA.allogusを捕獲し、日本に輸出した。その後、日周活動と高温耐性の関係をみるために、行動実験による高温耐性測定装置、画像解析による日周活動変化の実験装置を作成し、予備実験を行った。現在データを所得中である。
|