研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、キューバアノールトカゲを対象に、異なる環境への進出が起きた系統樹上の分岐点において正の自然選択を受けた遺伝子、または、その変異箇所を遺伝子配列の比較解析による推定を行った。解析には、低温森林深部環境に生息する3種(A. isolepis, A. allogus, A. mestrei)と高温開放環境に生息する2種(A. allisoni, A. sagrei)の遺伝子のコード領域の配列を用いた。昨年度実施したPAMLによる解析に加え、McDonald-Kreitman test(MK test)も行い、この2種間において適応進化した遺伝子を推定した。高温開放環境に独立に進出したと推定されたTrunk-crownグループのA. allisoniとTrunk-groundグループのA. sagreiの2種において正の自然選択を受けた遺伝子を独立に推定した結果、それぞれの種で、92個と202個の遺伝子が検出され、3つの遺伝子が2種で共通して検出された。また、MK test を行った結果、A. allogusとA. sagreiの間において、計90の遺伝子が適応進化したことが推定された。これらの遺伝子の内、A. sagreiにおいて、PAMLによっても正の自然選択を受けた推定された遺伝子は、4つあった。A. allisoniとA. sagreiの2種で共通してPAMLによって正の自然選択が検出された3つの遺伝子のうち、tgfb1は、皮膚に多く含まれる1型コラーゲンの転写を促進している。この1型コラーゲンをコードするcol1a1とcol1a2は、MK testによって検出された。また、室内実験によって、A.sagreiとA.allogusの日周活動の違いを測定した。
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