研究課題/領域番号 |
16H05768
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 浩之 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50210555)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 裸子植物 / 植物進化 / 植物系統分類 / グネツム / 成長応力 / あて材 / 負重力屈性 / 細胞壁 |
研究実績の概要 |
裸子植物であるが、二次木部に道管要素や多列放射組織を有するグネモンノキ成木樹幹を対象に、あて材組織が裸子植物的か或るいは被子植物的かを解明し、もって、被子植物型のあて(および負重力屈性発現様式)の起源を解明することが、本研究計画の目的である。本年度までに明らかとなった結果を、以下、詳細に述べる。 平成28年度(本研究計画初年度)は、成木7個体を供試した。傾斜樹幹における偏心二次成長、不均一表面成長応力の円周分布パターン、同じく木部繊維におけるミクロフィブリル傾角の円周分布パターンが、原始的な被子植物であるモクレン目の場合に類似していることを明らかにした。しかしながら、同時に樹皮(二次師部)が傾斜の上側で発達するため、その寄与を解明する必要性があることを強く意識した。 そこで平成29年度では、傾斜4個体について(いずれも成木)、樹皮の外層、中層、内層における内部ひずみ(成長応力解放ひずみ)を実測し、さらに解剖学的特徴をも調べた。その結果、傾斜の上側に沿って肥厚する樹皮では、とくに内層部分でセルロースに富む繊維(ゼラチン繊維)が発達すること、そこには大きな引張応力が発生していることを明らかにした。該当する繊維組織をエックス線回折分析に供したところ、高結晶性のセルロースIが主体であり、セルロースミクロフィブリルの配向は、繊維長軸方向にほぼ平行であることが分かった。このことから、樹皮の肥厚とそこに形成されるゼラチン繊維は、生体内においては繊維軸方向に大きな引張応力を発生し、このことは負重力屈性の発現に寄与するものと結論した。 肥厚した樹皮におけるゼラチン繊維の関与は、直径の小さい未成熟個体において顕著であるものと予想される。本年度までの実績を踏まえ、平成30年度は、幼木6固体について、樹皮(外層と内層)と木部表面における成長応力解放ひずみを実測することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、第2年次に、直径の小さい未成熟個体を対象に、木部および師部の解剖学的変異と成長応力の役割を解明する予定であった。このことは、未実施のまま据え置かれている。当初の予定以上に、成熟個体におけるデータの蓄積に力を注いだためである(このことは、成熟個体における負重力屈性発現には、木部の解剖学的変異と特異な成長応力がより主体的となっていると言う結論を強固することとなった)。 成熟個体についての試料は十分に揃ったので、30年度は、未成熟個体の調査に力を注ぐ予定である。 また平成28年度から遅れていたミクロフィブリル傾角の測定については、機器上の問題を解決することにより(研究機関内の他部局の装置を改良使用することにより)、順調に予定をこなしつつある(まだ若干遅れている)。
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今後の研究の推進方策 |
6月にインドネシアに渡航予定である。ジャワ島(クニンガン市)におけるグネモンノキ農園にて、実測と植物組織のサンプリングを行う。6泊7日間(現地滞在5日)のうちに、上記フィールド測定とサンプリングを行い、併せて現地協力研究者(ボゴール農科大学ユスフ・スド・ハディ教授、ガジャマダ大学スリ・ヌグロホ・マルスム教授)と、データのとりまとめと成果の公表、および今後の研究の発展性を議論する。 帰国後、名古屋大学の実験室において、樹皮および木部の組織構造の顕微鏡観察を行い、とくに、樹皮におけるゼラチン状繊維の発達程度、エックス線回折法によるセルロースミクロフィブリル配向角度の測定、さらにセルロース比率、リグニン比率などの化学成分的特徴を実測する。得られた結果を、フィールド測定で得られた成長応力解放ひずみと比較し、もって、グネモンノキ成木および幼木における負重力屈性の発現様式に関する結論(裸子植物型か?被子植物型か?あるいは第3のタイプか?)を導く。 結果を、8月にモントリオールで行われる、第9回植物バイオメカニックス国際会議にて速報する(すでに申し込み済み、29年度に続き、2回目の国際会議発表)。組織解析と化学分析が終了したのち、結果をまとめ、国際誌に投稿する予定である。
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