研究課題/領域番号 |
16H05769
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
伊藤 文紀 香川大学, 農学部, 教授 (50260683)
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研究分担者 |
江口 克之 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (30523419)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 採餌 / カスト特殊化 |
研究実績の概要 |
今年度は、タイ、ベトナム、マレーシア、シンガポールを訪問し、各地で非軍隊アリ性質を持つサスライアリ亜科のアリ類を探索し採集するとともに、サスライアリ属2種についても働きアリの卵巣について解剖による調査を行った。主な結果は以下の通り。 (1)Lioponera suscitatus 種群の2種についてコロニー構成と解剖結果、およびL. suscitatusの室内における産卵パターンと餌選好性について論文にまとめた。本種群はコロニーサイズが小さく(働きアリ個体数10~30個体)、巣の中には卵から蛹まで全ての発達段階の幼体が含まれていた。飼育下では蟻類の幼虫を専食し、ほかの節足動物は一切摂食しなかった。女王は継続的に産卵し、野外と同様につねに全てのステージの幼体が含まれていた。これまで日本を含むアジア各地で採集された非軍隊アリは、この種群を含むLioponera属をのぞくと、すべて一斉産卵同調成長であり、Lioponera属がきわめて特異であることが判明した。本属はこれまで調べた種のすべてがアリ専門食者であり、食性と採餌様式、および一斉産卵の関係を考える上で重要な材料であることが判明した。(2)サラワクで採集されたサスライアリ亜科非軍隊アリのYunodorylus doryloidesのコロニーに含まれていた女王の特殊な形態を記載し、グンタイアリ・シンドロームの進化と絡めて議論した。(3)非軍隊アリであるCerapachys属にふくまれコロニーサイズが異なる複数種が採集され、行動の観察を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多種のコロニー構成や、一斉産卵と同調成長の実体、餌の特殊化等のデータが得られており、また実験的な研究にすすむ準備ができているため。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り、最終年度も東南アジア各地で採集を継続し、さらなるデータの蓄積につとめる。最終年度であるので、これまで得られたデータのまとめとともに、分子系統樹を作成し、形質の分布状況を明らかにする。また、室内と野外での行動観察を一層進め、自然史的知見を蓄積させるとともに、一斉産卵と同調成長メカニズムに関する操作実験をおこなう。これらの知見を統合し、サスライアリ亜科の行動と生態の多様性を明らかにし、軍隊アリ形質の進化について議論する。
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