研究課題
異なる気候帯に属する湖沼のメタン酸化細菌(MOB)叢およびメタン栄養食物網の気候応答メカニズムを理解するために、熱帯のセブンレイク、亜熱帯の翡翠水庫、温帯の琵琶湖において比較観測調査を実施した。1-a) セブンレイク:深度の異なる7つの火山湖沼群で観測調査を行ったところ、水深60m以深の湖は部分循環湖に分類され、38m以浅の湖では、雨季から乾季の移行期に吹く冷温な北東風によって全循環することが明らかとなった。部分循環湖では、強還元な水温躍層下で1mM/L以上の高濃度メタンの貯留が周年観察された。1-b) 翡翠水庫:長期観測調査の結果、暖冬年には循環不全が起こり、続く夏季成層期に還元化した深底層でメタン貯留が増大した。他方、冷冬年には全循環が起こり、深底層のメタン貯留が消失した。2018年から続く暖冬の影響により、2019年には、深底層で60μM/L以上のメタン濃度が観測された。1-c) 琵琶湖:冬季に全循環が起こる一回循環湖と分類されるが、2018年以降の暖冬傾向により、循環不全と深底層の貧酸素化が観察された。メタン濃度は全層を通じて極めて低く、近底層にメタン亜極大が観察されるものの最大でも0.2μM/L以下だった。2) MOB叢・メタン栄養食物網:いずれの湖沼でも、MOBの主要分類群であるType I・Type II、さらに、嫌気的MOBであるNC10が観察されたが、その密度や深度分布は観測年や季節によって湖沼間で大きく変動した。琵琶湖と翡翠水庫のMOB叢は分子系統的に近縁関係にあったが、セブンレイクのType I・Type IIの出現分類群は前2者と大きく異なり、さらに、新奇なメチル栄養細菌が高頻度で観察された。MOBから動物プランクトンに栄養転送される脂肪酸の割合は、いずれの湖沼においても数%程度と低かったが、還元的なセブンレイクではNC10由来の脂肪酸が検出された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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