研究課題/領域番号 |
16H05778
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
河瀬 眞琴 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00192550)
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研究分担者 |
竹谷 勝 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源センター, チーム長 (00355728)
内藤 健 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源センター, 主任研究員 (20581705)
長田 俊樹 総合地球環境学研究所, 研究部, 名誉教授 (50260055)
土門 英司 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 遺伝資源センター, 上級研究員 (50355658)
竹井 惠美子 大阪学院大学, 国際学部, 教授 (90197252)
渡邉 和男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90291806)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物遺伝資源 / 生物多様性 / 民族植物学 / 国際共同研究 / フィールド調査 |
研究実績の概要 |
ミャンマー連邦共和国(以下、ミ国)の北端に位置するカチン州北部プタオ近郊、西部のチン州の山地で農家を訪ね植物遺伝資源の探索収集を実施した。チン州では南部のミンダッおよびマドゥピとその周辺を対象とした。本調査は農業生物資源研究所(現 農研機構)とミ国農業灌漑省(現 農業畜産灌漑省)農業研究局(DAR)が取り交わした植物遺伝資源に係る協定に基づいて、ミ国側はDAR傘下のシードバンクの研究員がカウンターパートとして参加した。 収集した遺伝資源は2セットに分け、1セットはDARシードバンクで保存し、ミ国で増殖し、育種・研究等に活用される予定である。他の1セットは植物遺伝資源国際条約(ITPGRFA)に定められた標準移転契約(SMTA)をミ国と交わし、両国の植物検疫手続きを行い日本に導入した。納入植物遺伝資源は農研機構(NARO) 遺伝資源センターに保存し、NAROの実施する農林生物資源ジーンバンク事業の保存遺伝資源として将来の作物改良や研究、研修等に利用される。なお、イネ遺伝資源は植物防疫法の輸入禁止品に相当するため、前年度収集のイネ遺伝資源23点とともに農林水産大臣の特別許可を得て導入した。244点の植物遺伝資源は、穀類75点(内イネ30点)、マメ類45点、野菜類124点(ウリ科52点、ナス科17点)が含まれる。それらには近縁野生種(CWRs)や半栽培状態の植物が含まれている。 以上のように、穀類、マメ類、野菜類の遺伝資源を多数収集することができた。現地において分類・同定を行い、特性を記録するとともに収集地点情報や農家の栽培や利用に関する情報を収集した。この成果は農業生物資源ジーンバンク事業で刊行している植物遺伝資源探索導入調査報告書へ投稿した。また、現地で撮影した画像情報はNAROジーンバンクのField Studyデータベースに格納した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミャンマー連邦共和国(以下ミ国)本現地調査の対象地域は入域許可に時間がかかり、ミャンマー語以外の現地独特の言語、また、現地の道路事情が悪く利用可能な交通経路、交通手段が限られている等の障害があるが、本課題では、ミ国農業畜産灌漑省(MOALI)農業研究局(DAR)とわが国の農研機構(NARO)との遺伝資源に係る共同研究協定に基づき、NAROが受託した農林水産省プロジェクト(PGRAsia)、科研「辺境少数民族地帯での植物利用及び伝統知の遺存と地域発展活動や国際経済の影響評価(課題番号25257416)」等との協働の上現地入りすることができた。同一地域で異なる目的・方法を持つ複数のプロジェクトが協力することにより、シナジー効果により極めて効率的に調査をすることが出来た。このような協力関係はミ国側の入域許可や調査許可といった行政手続きの迅速化やカウンターパート研究員の配置の適正化につながった。 当初計画していたザガイン地方域ナンユン郡区はアクセス経路上の現地情勢の変化により不可能になり急遽カチン州プタオ郡区に変更した。プタオ郡区は外国人の入域を制限していたが、DAR、農業局(DOA)、カチン州政府との緊密な連携により新たな入域許可を得ることが出来た。チン州においてはアクセスの容易なファラム郡区、ハッカ郡区、ティッディム郡区ではなく、ミッダッ県のミンダッ郡区やマトゥピ郡区を集中して調査した。 さらに、ミ国に隣接するインド共和国(以下インド)北東部のナガランド州やマニプール州において、ナガランド大学、インパール大学、グワーハーティ大学、インド植物調査局の研究者らの協力を得て、アッサム州のグワーハーティからサルバリ地区、インパールからコヒマおよびキクルマ地区、インパールからウクルル地区において予備的な視察を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年である平成30年度は、平成29年度の成果を検討しミ国において未調査地域を対象地域に含めることを計画している。ただし、ラカイン州のロヒンジャ問題、北部カチン州やシャン州北部における政情の不安定化等があり、安全を第一に柔軟な対応が求められている。 平成29年度の調査においてチン州に伝統的作物・有用植物の多様性が残っていることが明らかとなったので、より時間をかけて聞き取り調査を行う。北部のハッカ郡区とその周辺を、南部のマトゥピ郡区から南西部のパレッワ郡区を検討している。対象作物は28、29年度と同様であり、焼畑を中心に穀類、マメ類、野菜類の在来作物品種や有用植物とその近縁野生種(CWRs)を対象とし、DAR等ミ国研究機関と協力し収集品や情報を共有する形で実施するが、マメ類(とくにVigna属)栽培種とそのCWRsに注意を払いたい。 引き続き河瀬が遺伝資源班、長田・竹井がエスノボタニー班として現地調査する。河瀬は分類・文書化と多様性解析を行い、全体を統括する。渡邉は資料の収集を進める。竹谷は現地画像等収集情報をデータベースに格納し公開する。ミ国側と協力し、今までの現地研究の総括を行うワークショップまたはシンポジウムを現地で開催する予定である。インドについては、植物遺伝資源収集は行わず、北東部で伝統作物や有用植物に関する聞き取りを継続する。
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