研究課題/領域番号 |
16H05784
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
眞家 永光 北里大学, 獣医学部, 講師 (00453514)
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研究分担者 |
渡邉 彰 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50231098)
池永 誠 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (70511822)
落合 博之 北里大学, 獣医学部, 講師 (90440156)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 熱帯泥炭 / 炭素循環 / 多様性 / 学際的評価 |
研究実績の概要 |
熱帯泥炭の持続的利用に資するために,熱帯泥炭の分解性について,物理的,化学的,生物的な面から学際的に解明することを目的として研究を行っている. 今年度は,熱帯湿地原生林から採取した泥炭を油ヤシプランテーション(OPP)環境下においてメソコスムを用いて,月に一度発生する二酸化炭素とメタンの量を測定しながら4年間培養した.また,今年度は,培養3年目に採取した泥炭の分解特性を調べるために,サイズ分画を行い,分解に伴う泥炭粒子サイズを調べた.1年目に採取して分析した泥炭と同様に,泥炭の質の違いが分解速度に大きく影響を与えていた.つまり,泥炭ドーム中央部の泥炭(元来,極貧栄養で地下水が高く,微生物分解が進まない状態で堆積していた泥炭)は,泥炭ドーム周辺部の泥炭(貧栄養ではあるものの,相対的に中央部よりも養分に富んでおり,地下水位も低いためにある程度微生物分解を受けている)に比べ,分解速度が3倍以上速かった. また,分解に伴い泥炭の粒子サイズは急速に低下した.この変化は,開発後の泥炭の透水性,通気性に影響を与えると推察された. 泥炭の分解速度に,温度,水分含量,泥炭の質のいずれが最も影響を及ぼすかを1年間の室内における培養実験により調べたところ,泥炭の質の違いが最も影響を与えた,また,水分含量は,泥炭の分解速度に対して正と負の効果を示す(酸素の移動性と,酵素や微生物の移動性の両方に影響する)と考えられた. 原生林および油ヤシプランテーション(OPP)に開発した熱帯泥炭の地下水中の溶存有機物(DOM)組成を比較したところ,OPP下の泥炭は,酸化分解の進んだ有機物が多い一方,還元環境において生成されるDOMも多く含まれることが示唆された.その理由として,施肥に伴う微生物活性の増加が考えられた. 泥炭は,有機物が多く,その中の微生物のDNAの増幅は困難であったが,泥炭中のDNAを増幅することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メソコスムを用いた泥炭の分解培養実験が予想通りに順調に進行している. 泥炭中の微生物群集構造の解析も問題なく行えることが確認された. マレーシア国の共同研究機関(サラワク州熱帯泥炭研究所)との連携もうまく取れている.
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今後の研究の推進方策 |
土壌の圧密の程度を変えた泥炭を塩ビ管内で培養し,土壌水分,酸化還元電位,無機化速度に及ぼす土壌の圧密の影響を明らかにする. OPP環境下で5年間分解培養を行った熱帯泥炭を回収し,その物理化学的性質の変化を,物理分画,炭素組成分析等により明らかにする. OPPの炭素収支に対する溶存有機炭素の影響を明らかにする. 異なる環境下の熱帯原生林中の泥炭中の微生物群集構造と,開発に伴うその変化を解明する.
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