イボタケ類の菌糸マットの消長とポドゾルの形成過程への影響を明らかにするために2017年に設定した固定調査地において、昨年度に引き続きイボタケ類の菌糸マットの年間成長量、土壌有機物(リター)の分解率と窒素濃度を調査した。さらに土壌から抽出したDNAの次世代シーケンスを用いてバクテリア、アーキア、真菌類の群集構造に与える影響ついて調査した。 2017年はイボタケ類の合計5か所の菌糸マットについて、その先端部の位置変化を経時的に調べるために菌糸マット縁部にマーキングの杭打ちを行った。そこで本年度は2018年に引き続き菌糸マット縁部について外側への移動距離を測定した。その結果1年間に平均で約-2 cmの移動距離となった。また、全体で25か所の測定点の中で22か所において菌糸マット縁部の内側への衰退あるいは停滞が認められた。これらの結果から調査地の菌糸マット面積は縮小したものと推察された。 一昨年度に設置したリターバッグの一部を2年後に回収し、菌糸マット上と菌糸マットの認められない土壌中に設置したリターバッグに封入されたリターの重量と窒素含有量の比較を行った。その結果、菌糸マット上に設置したリターバッグ内には菌糸の侵入が観察され、窒素含有量がわずかに上昇していることが明らかになったが、リターの重量減少率はマットの外側のほうが高い傾向が認められた。 イボタケ類の有機物層を含む菌糸マットとその直下の鉱質土壌、マットの外側の有機物層とその直下の鉱質土壌、および菌糸マットが消失したと推定される地点の有機物層とその直下の鉱質土壌についてDNA抽出を行い、バクテリア、アーキア、真菌類それぞれのユニバーサルプライマーを用いてPCR増幅後にシーケンスを行った。現在データの解析を進めている。
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