研究課題/領域番号 |
16H05791
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
梶本 卓也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353638)
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研究分担者 |
大橋 伸太 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (70754315)
大谷 達也 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80353613)
諏訪 錬平 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40535986)
大澤 晃 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (90288647)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アマゾン熱帯林 / 択伐施業 / 成長解析 / 安定同位体 / 森林回復 |
研究実績の概要 |
ブラジル・アマゾンの択伐施業試験地において、伐採後の森林回復速度を明らかにする目的で、9ヵ所のプロットで毎木調査を行った。すでに昨年度収集した別の固定プロットの結果も加えて合計20ヵ所のデータから、択伐後の経過年数と地上部バイオマスの回復速度の関係を解析した。その結果、一部、枯死等でバイオマスが減少するプロットもあったが、伐採後10~15年は年間10~20 Mg/ha程度の速度でバイオマスは増加しており、本施業試験地で適用されているha当たり2本程度と弱度の択伐であれば、森林の炭素蓄積では、当初想定した回帰年数(25年)よりも短期間で森林が回復する可能性が示唆された。 伐採対象となる5樹種(合計約100個体)に設置した直径成長バンドの測定データから、幹の肥大成長の季節変化や年成長速度を解析した。雨季に比べて乾季(5~8月)に成長が低下したりほぼ停止する個体が、一部の樹種で多く認められた。一方、年間の肥大成長量については、同じ樹種でも個体差が大きく、択伐による成長への影響を評価し、伐採後の残存個体が伐採許容の直径にどのくらいの本数到達するか正確に予測するには、成長の年変動の要因として、つるの有無や隣接木の影響なども考慮した解析が必要と思われた。 年輪や安定同位体比分析による伐採対象樹種の成長速度復元手法の開発については、4樹種から採取した幹円板試料を用いて検討した。その結果、幾つかの樹種では目視で成長輪が明瞭に認められ、年輪構造を用いた復元手法の可能性が示唆された。 今年度は、さらに天然林試験地において、伐採対象の1樹種について詳細調査木を複数個体選定し、自動計測式のデンドロバンドと細根動態観測用のライゾトロン(根箱)をそれぞれ幹の胸高部と根系周辺の土壌中に設置し、同一個体における幹(地上部)-根(地下部)の季節成長の同時計測も開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)現地調査の遂行や、設置したデンドロバンド等測器類のデータ回収や保守については、共同研究機関のブラジル国立アマゾン研究所(INPA)の協力もあり、ほぼ計画通りに進んでいる。なお昨年度(H29)は、本課題の国際共同研究を円滑に進めるために、INPAと森林総合研究所との間で共同研究に関する覚え書き(LOA)を結んだ。 2)本課題の択伐施業試験地は、現地の民間会社(Precious Wood Amazon)の敷地内にあるが、同社からは、調査プロットの設置や現地調査、測器設置のための入林許可、また幹の円板試料の採取においても非常に協力的なため、その点でも円滑に研究が進んでいる。 3)データ解析については、課題代表、分担研究者を中心に進めており、成果の公表についても、昨年度は学会発表のみであったが、現在(H30年4月)論文を投稿中であり、最終年度の次年度に向けて、研究成果のとりまとめもおおむね計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(次年度)は、天然林及び択伐施業林の両試験地で引き続き毎木調査(一部未測定プロットのみ)や直径成長バンドの再測を行う。その際、残存個体におけるツルの有無や、隣接木との競合関係などの情報収集も行う。天然林試験地に設定した詳細調査木については、自動計測式のデンドロバンドとライゾトロンのデータ回収を行う。また、炭素及び酸素安定同位体比分析用の幹円板試料の解析も進め、年輪構造を用いた過去の成長速度復元手法の可能性を検討する。 以上の結果をもとに、択伐後の林分バイオマスの回復速度や個体の成長反応を明らかにし、木材生産や樹木炭素蓄積量の持続性の点も含めて、中央アマゾン熱帯林の本調査地で適用されている低インパクト型の択伐施業が妥当な施業法かどうかを検証する。
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