研究課題
モンスーンの影響を受ける地域の季節は雨季と乾季に大別される。この地域の浅海域に生息する魚類の多くは雨季・乾季に対応した季節性繁殖を行っているため、降雨に関係した水域環境変化を繁殖活動の時刻あわせに利用していると考えられる。本研究では、熱帯モンスーン気候帯で繁栄している魚類が繁殖活動の同期に利用している環境要因を特定し、この地域の繁殖活動の時刻あわせの成立機構を明らかにすることを目的として企画された。ベトナム中部に設置した調査地点における海況変化と魚類の繁殖活動を比較して繁殖に利用される環境要因を特定する。加えて、視床下部―下垂体―生殖腺軸の上位に位置する脳部位にターゲットを絞り、モンスーンに関わる魚類の環境センサーの存在と役割の解明を行う。平成29年度には4回の海外調査を行った。1回目の調査(2017年3月29日~4月2日)では、フエ農林大学の研究協力者と平成28年度の海外調査の総括を行うとともに、平成29年度のフィールド調査について日程等を決定した。2回目(2017年6月25日~6月29日)、3回目(2017年8月19日~8月23日)、そして4回目(2017年12月2日~6日)においては実際に魚(ゴマアイゴ)を採集し、生殖腺の発達を確認すると共に、生殖腺の一部をフォルマリンに固定し組織学的観察用に持ち帰った。以上の研究により、ベトナム中部フエ沿岸に生息するアイゴ類の繁殖時期が5月にピークを迎えることが明らかとなってきた。国内予備実験では、本調査に必要な栄養関連遺伝子(インシュリン様成長因子、レプチン、グレリン)の遺伝子のクローニングを開始し、これらのうちのいくつかにおいてはクローニングを完了するとともにreal-time quantitative PCRによる測定系を用いて脳や肝臓に発現している遺伝子量の測定を開始した。
2: おおむね順調に進展している
フエ農林大学の研究協力者との連絡を密接に行い、相互の信頼関係に基づいたフィールド調査がほぼ終了しつつある。毎月の採集およびサンプル処理も問題なく行われており、研究に必要な個体数も集まりつつある。また、国内予備実験では本研究の対象としていた遺伝子類をクローニングすることができた。
当初計画およびフエ農林大学の研究協力者との打合せに基づいて、昨年度までで欠損しているデータの補足を行う。また、ベトナムにおける研究対象魚類の生殖年周期もほぼ判明していることから、フエ農林大学の臨海実験所において飼育実験を開始する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Ocean Science Journal
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1007/s12601-018
Fish Physiology and Biochemistry
10.1007/s10695-018-0471-7
http://www.takemura-lab.jp/index