研究課題/領域番号 |
16H05798
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
李 哉ヒヨン 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60292786)
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研究分担者 |
森嶋 輝也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他, その他 (30391486)
清野 誠喜 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90225095)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | EU農協 / ビジネス環境 / 競争戦略 / 組織形態の変容 / 協同組合からの逸脱 |
研究実績の概要 |
農協のビジネス環境の変化と、それに伴う農協の組織構造の変容の実態を探るべく、昨年度の南欧諸国(スペイン、イタリア)に続き、北欧のフィンランド(PELLERVO)ほか、CIS国のチェコ共和国(ZSCR)とポーランド(KSR)の協同組合中央会において、農協組織の組織モデル変容の経過に関するヒアリングが実施された。 フィンランドについては、多国籍酪農協として株式会社をネットワーク組織として抱えることで知られる「Valio」について集中的に論議が行われた。Valioは、生乳の過剰生産による価格下落のダメージを解消すべく、生産者の自治を制限し農協組織のマネジャーの権限を強めるガバナンス構造へと移行したほか、乳製品の加工販売事業の導入をめぐる投資の確保が農協の子会社を株式会社へと移行させたことが分かった。これにより、過剰生産による生産の統制およびフードチェーンの川中・川下への後方統合が求められるビジネス環境の変化が、農協にとって伝統的協同組合からの逸脱を促す主要な要因の一つであることが確認できた。 一方、チェコ共和国およびポーランドについては、資本主義国への移行を機に、多くの協同農場が有限会社や株式会社などへと企業形態を転換したことが分かった。とはいえ、EUの共通農業市場制度が進める生産者組織育成が政策効果を発揮され、協同組合の企業形態を有する新たな生産者組織も徐々に増加している。そうした中、大手スーパーチェーンとの取引を有利に進めるために、一部の農協はすでに合併もしくは農協間提携などによる出荷規模拡大を進めている実態を垣間見ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画通りに現地調査が実施され、必要としていた十分な情報やデータが入手できた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究の最終年度を迎え、まだ現地調査が実施されていない西欧諸国とりわけドイツ、オランダ、ベルギーの農協組織を対象に、現地調査に基づいて、これまでの組織形態および組織構造変容の背景と実態を明らかにする予定である。 また、現地調査の終了を待ち、研究分担者間の役割分担に基づき、各々のエリアに関するカントリレポートにEU諸国を横断的に取扱った総論を加えた上で、成果報告書を作成する。
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