研究課題
水田地域における温室効果ガス抑制のための水管理手法の実践が広域に展開されることが喫緊の課題である.この課題解決のために,農業水利末端地区のレベルにおいて,ハード対策として分水工整備によるブロックローテーションシステムを導入し,同時に,ソフト対策として水管理組織による分水工管理の仕組みを組み合わせることを試みた.これによって,メタン放出抑制効果を有する間断灌漑(Alternative Wetting and Drying: AWD)が,効率的に実現できると考えた.実証試験の結果を踏まえ本年度は,イネの生育と収量安定に必要な湛水深管理を考慮した上で,湛水深,土壌の酸化還元電位,メタン放出量の実測値から,メタン放出抑制のための具体的なAWD管理のあり方を提示した.対象地はベトナム紅河流域の低平地水田地区である.2017年の冬春作(2~6月)と夏秋作(7~9月)における地区内6圃場での湛水深と深さ5,15,30 cmの土壌の酸化還元電位の経時変化,および1週間間隔でのメタン放出量の測定結果を用いた.その結果,冬春作では,3~6日間非湛水状態が保たれるとメタン放出がゼロに近くなること,非湛水状態後の湛水状態が9~16日連続的に維持されると再放出が生じることがわかった.また,夏秋作では,降雨が多いため,非湛水期間を設けても酸化還元電位が上昇しづらく,メタン放出が抑制されなかった.田植え後や出穂期を含む前後の期間には湛水状態を保つことが収量安定にとって重要であることと中干しと収穫前の落水を考慮すると,AWDとして非湛水状態を3~6日間設定する回数は冬春作の場合3回であることが明らかになった.ここで提示することができた水管理スケジュールは水管理者が分水工管理を行うにあたって利用可能と考えられる.また,農家にとっても,水管理組織による組織的水管理に対する理解を深める上で有効と考えられる.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Agricultural Management
巻: 217 ページ: 179-192
https://doi.org/10.1016/j.agwat.2019.02.015
応用水文
巻: 31 ページ: 79-87