研究課題
肝蛭症は世界中で畜産業に甚大な経済を与えている。肝蛭はアフリカで進化した寄生虫で、アフリカには遺伝的多様性に富む肝蛭個体群が分布すると考えられている。しかしながら、多くのアフリカ諸国では家畜で蔓延している肝蛭の種類すら正確に識別されていないのが現状である。本研究ではウガンダを研究拠点とし、応募者が開発した新規種識別マーカーを用いて肝蛭の流行種を調査する。次に、系統解析マーカーを駆使して現地に肝蛭が伝播・定着した経緯を明らかにする。この過程で肝蛭の伝播経路を断ち切る対策を講じるための基盤情報が得られると期待される。さらに、セミナーおよび技術講習会を通して現地の研究者・獣医師と研究成果を共有することで、ウガンダにおいて効果的な防除対策を立案する契機となることを目指す。H29年度は(1)ウガンダ産肝蛭の系統解析と(2)採取地域の拡大を目的とした。(1)ウガンダ産肝蛭の系統解析H28年度に解析を行った核DNAのpepckとpoldに加えて、H29年度は系統解析マーカーであるミトコンドリアDNAのnad1とcox1の塩基配列を解析し、ウガンダ産肝蛭はザンビア産の肝蛭と近縁であることが明らかになった。(2)採取地域の拡大新たにエチオピア、南アフリカ、アルジェリアのアフリカ各国の研究者の協力が得られ、アフリカ各国由来の肝蛭虫体を入手できた。これらの国由来の肝蛭をウガンダ産肝蛭と比較することで、ウガンダ国内外での肝蛭の伝播経路を明らかにできる。さらに、中東のアフガニスタンやパキスタンからも研究協力が得られ、肝蛭虫体の提供を受けた。したがって、今後、アフリカ大陸内だけでなく、いかにして肝蛭がアフリカからアジアに分布を拡大したかについても解明するための準備ができた。
2: おおむね順調に進展している
ウガンダの肝蛭に加えて、エチオピア、南アフリカ、アルジェリアのアフリカ各国由来の肝蛭を得ることができ、アフリカ国内における詳細な伝播経路を解析するための肝蛭虫体を十分に確保できたため。
ウガンダ産肝蛭について、ウガンダの2拠点から得た肝蛭虫体のDNA解析結果について、アフリカ各国由来の肝蛭と比較する。具体的には、エチオピア、アルジェリア、南アフリカ由来の肝蛭とウガンダ産肝蛭を比較することで、ウガンダ内外での肝蛭の伝播経路を明らかにする。また、中東のアフガニスタンやパキスタンから得た虫体についても解析を行う。これにより、アフリカ大陸内における肝蛭の伝播経路だけでなく、肝蛭がいかにしてアフリカからアジアに分布を拡大したかについても考察できる。
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すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
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