研究課題
マラリアはヒトでは年間40万人以上の死者を出す重篤な感染症であるが、ウシ科動物のマラリアは20世紀半ばにいくつかの報告がされて以降、ほとんど報告がない。研究代表者らはタイでスイギュウを対象に血液から遺伝子診断を行ったところ、約半数にマラリア原虫を認めた。1919年の論文によると、インドで実験的に牛疫ウイルスを感染させたスイギュウの血液からのみマラリア原虫が検出されているため、免疫の低下したスイギュウで発症する可能性があるが、その実態は全く明らかでない。流行域も我々の予備研究により、インド以外にタイにおいても流行していることが初めて明らかになったばかりである。そのため、本研究ではタイを中心にウシ科動物におけるマラリア原虫の感染状況とその病原性を明らかにすることを目的とする。2016年度はタイ北部のナーン州及び南部-中部のぺチャブリ州、チョンブリ州のヤギについてPCRによるヤギマラリアの調査を行ったところ、ぺチャブリ州のヤギ4%についてマラリア原虫DNAを検出し、アジアにおいて初めてヤギのマラリア原虫が存在することが明らかとなった。さらにイランのヤギについてもマラリア原虫DNAの検出を試みたが、こちらは全て陰性であった。
2: おおむね順調に進展している
我々の以前の調査により、ザンビアのヤギからマラリア原虫DNAを検出したが、これまでアジアのヤギからのマラリア原虫検出は報告が無く、今回が初めての記載となった。よって概ね順調に進展しているが、タイの政情の都合により現地調査については一部延期となった。
引き続きスイギュウ、ヤギからマラリア原虫DNAの検出を行い、その分布を明らかとする。また、ヤギないしスイギュウを用い、原虫の分離を試みる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Parasitology
巻: 143(12) ページ: 1501-1508
10.1017/S0031182016001141.