研究課題/領域番号 |
16H05809
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
岩崎 貢三 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (40193718)
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研究分担者 |
田中 壮太 高知大学, 教育研究部総合科学系黒潮圏科学部門, 教授 (10304669)
島村 智子 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (50350179)
康 峪梅 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 教授 (70284429)
上野 大勢 高知大学, 教育研究部総合科学系生命環境医学部門, 准教授 (90581299)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 土壌学 / 植物生育環境学 / 植物栄養学 / 食品化学 / 農林水産物 / ベトナム / 茶葉 / 茶園 |
研究実績の概要 |
本研究では,ベトナム・タイグエン省の特産茶葉生産地およびその周辺の茶園において土壌及び茶葉の調査を実施し,安全・高品質な茶葉生産を支える土壌要因,生産物の品質および機能性等の付加価値を科学的に明らかにすることを目的としている. 平成28年度は,7月に,研究代表者と分担者1名がTan Cuong村を訪問し,茶園の状況と生産物の品質等に関する聞き取り調査を実施した.その結果,Tan Cuong村のなかでも,Cong川沿いに位置するHong Thai 1地区,Hong Thai 2地区,Soi Vang地区で生産される茶葉の品質が特に良いとの情報を得た.これらの地区の土壌は,沖積土壌であるのに対し,Cong川から離れるにつれて,土壌の粘土含量・酸化物含量が高い傾向にあると推察された.そこで,Cong川を起点とする3本のトランセクトを引き,各トランセクト上で川からの距離が異なる4つの茶園を選定し,重点的に調査を行う茶園とした.また,いくつかの茶園で試験的に土壌溶液採取装置を埋設し,土壌溶液の採取が可能であることを確認した.一方,対照として,タイグエン市の北約10 kmに位置するSong Cau村でも予備的な調査を行い,重点的に調査を行う3つの茶園を選定した. 平成29年2月に,研究代表者,分担者2名,協力者4名がTan Cuong村およびSon Cau村を訪問し,予備調査で選定した重点的に調査を行う茶園において,土壌断面調査,土壌・茶葉試料の採取並びに土壌溶液採取装置の埋設等を行った.また,現地研究協力者に土壌溶液の継続的な採取を依頼するとともに,pH, EC, アンモニア態窒素濃度, 硝酸態窒素濃度の測定方法を指導し,採取直後の土壌溶液の分析を依頼した.採取した土壌・茶葉試料を日本に輸出し,現在,各種分析にとりかかっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では,「ベトナム・タイグエン省の特産茶葉生産地およびその周辺で品質・生産性が劣るとされる地域において,それぞれ栽培年数が約10, 25, 40年の茶園を選び,調査を実施する」ことを計画していた.異なる栽培年数の茶園について生産物の比較を行うためには,同一の茶樹品種を対象とする必要がある.予備調査実施にあたり,現地研究協力者を通じて,同一品種について栽培年数が異なる茶園を選定する協力を依頼したが,現地では,伝統的な茶樹品種であるTrung Duが新しい品種に改植されつつあり,同一品種について栽培年数の異なる茶園を設定することは困難であることが分かった.このため,当初の研究計画を修正し,地形と土壌・茶葉の品質の間の関係に焦点を当てることとした.具体的には,Cong川からの距離が異なる地点に位置し,Trung Du(栽培年数15~20年以上)を栽培している茶園について,土壌及び茶葉の品質等の比較を行うこととした.また,一部の茶園では,同一区画内に複数の品種の茶樹が栽培されていたため,これらの茶園で採取した茶葉については,品種間の比較を行うこととした. 以上のような事情から,重点的に調査を実施する茶園を選定するまでに時間を要したため,土壌・茶葉試料の採取時期が遅くなり,分析が進んでおらず,研究の進捗は,当初計画よりもやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,前年度に採取し輸入した土壌試料の一般理化学性,微量元素・有害元素の分析を継続して実施する.また,現地で凍結保存している土壌溶液試料を持ち帰り,カチオン・アニオン濃度の分析を行う.一方,茶葉試料については,無機成分含有率の分析およびテアニン及びカテキン類の含有率,DPPH法及びWST-1法による抗酸化活性の測定を継続して行う.これらの調査・分析は,29年度内に終了させることを目標とする.一方,土壌溶液採取装置の設置場所の修正,ポーラスカップの交換等のため,現地訪問を計画する.また,同時に不足試料の採取を行う.なお,研究の進捗状況がやや遅れているため,土壌の団粒構造,土壌微生物性の検討については,上記項目の分析結果を見て実施するかどうかを判断する. 平成29年度末には,それまでに得られた各種データをとりまとめ,Cong川からの距離の異なる地点に位置する茶園間で,土壌環境,生産物の比較を行い,土壌要因と茶葉の生産性・品質,機能性とを関連付ける重要なパラメーターを抽出する.
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