研究課題/領域番号 |
16H05810
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
黒澤 靖 九州大学, 熱帯農学研究センター, 特任教授 (70128114)
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研究分担者 |
松元 賢 九州大学, 熱帯農学研究センター, 准教授 (60304771)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ピート / アンモニウム態窒素 / 形成年代 / C3植物 / 窒素供給源 / バングラデシュ / 還元菌 / 溶出 |
研究実績の概要 |
バングラデシュ北部マイメンシン県のヒ素汚染地で、地層のボーリングを行い、ピートサンプルを採取した。このサンプルは、地表面から6-8 mの深さにあった。ピートの炭素濃度(7%)、窒素濃度(0.4%)は、高い値であった。採取地の地下水のヒ素濃度は25 ppbで、WHOの水質基準を上回っていた。また、地下水のアンモニウム態窒素濃度は、1-5 ppmと高く、また酸化還元電位は負の値で、地下水は還元状態を示した。 また2016年に、バングラデシュ西部ジョソール県のヒ素汚染地で採取したピートについて、炭素14年代、窒素・炭素の安定同位体比、C/N比を測定した。その結果、ピートの形成年代は、今から3200‐4000年前で、ピート形成当時に繁茂していた植物はC3植物、ピート中の窒素の供給源は、C3植物遺骸の可能性があると判断された。 さらに、上記バングラデシュ西部で採取したピートについて、XRD分析を行ったところ、主な鉱物は、クォーツ、カオリナイト、イライト、バーミキュライトであった。またFE-EPMA分析によれば、ヒ素を吸着するフランボイダルパイライトが、ピート中に存在した。 上記のバングラデシュ西部で採取したピートについて、これに存在する還元菌の種類を特定する作業を、PCR-DGGE電気永動 および DNA 配列解析により行った。その結果、ピート中には複数種の還元菌が存在し、このうちのいくつかの還元菌はコロニーを形成していた。このことが、ピートから地下水へヒ素の還元溶出に関連を持つと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況は、当初の予定の80%程度である。進捗状況が100%でないことについては、本年度のピートの採取(バングラデシュ北部で実施)が、2018年1月に遅れた影響が大きい。ピートの採取は、乾季を待ち、試掘でボーリング位置を決めて行う必要があったため、時期が遅れた。 採取したピートを、許可を得て日本に持ち帰った後、ピートの化学分析は順調に進んだ。ピートの炭素14年代、窒素・炭素の安定同位体比は、現在、測定準備中である。また、2016年にバングラデシュ西部で採取したピートの炭素14年代、窒素・炭素の安定同位体比については、依頼分析に出して、測定を終了した。 ピートの微生物分析は、2016年に採取したものについて、一定程度終了した。この分析は、これまでに経験のないものであったため、分析手法を確立し、分析結果を得るのに時間がかかった。今年度採取した分については、現在測定中である。
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今後の研究の推進方策 |
地層からのピート採取を、これまでバングラデシュの西部と北部で行ったが、来年度(最終年度)は、ベトナムの紅河デルタまたはメコンデルタで行う予定である。 今後、ピートの炭素14年代、炭素安定同位体比の測定を、バングラデシュで採取済のもの、およびベトナムで来年度採取するものについて行い、各測定値に共通性があるかどうかを検討する。 ピート中の窒素の供給源については、これまで化学肥料と考えられていたが、窒素の供給源は、本年度測定した窒素安定同位体比からC3植物の可能性があった。窒素安定同位体比についても、本年度と今後の測定値を比較し、全体的に共通性があるかどうかを検討する。 ピート中の還元菌については、存在の有無の確認や、還元菌の種類の特定を、今後効率的に進める。また、どのような還元菌がピートから地下水へのヒ素溶出に関るのかを、分子生物学的手法から明らかにする。 これまでにピート・地下水について測定した諸要素をもとに、ピートから地下水へのヒ素溶出現象を、総合的に解析する。
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