研究課題
ミャンマー国では、30代前半から肝癌発症死亡例が多数報告され、その原因として肝炎ウイルス感染と共に国土に含まれる鉄の過剰摂取及びヒ素の関与が指摘されている。今回、民族の居住地域特性に注目して、肝癌発症状況の精査と肝癌病理検体を収集し、特に鉄関連発癌で重要なp53変異とヒ素によるp15INK4b遺伝子の不活性化を指標として地域間での肝癌若年発症との関連を動物実験も含め検討することを目的とした。平成28年度は、12月17日-23日にヤンゴン及びネピドーを訪問し保健大臣Dr. Myint Htweとの会談を始め関係機関との調整を行った。また、ビルマ族を中心に正常及び肝癌の剖検試料、それぞれ4例と10例のパラフィンブロックを入手し解析した。また同時に飲料水の収集解析も行った。パラフィンブロックの薄切後、病理形態やKi-67の免疫染色及びTUNEL法により評価した。その結果、Well differentiatedが3例、Moderate differentiatedが5例、Poorly differentiatedが1例であった。DNAメチル化レベルには、大きな変化は見られなかったが、5-hydroxymethylcytosineは癌で顕著に減少することを見出した。また、p53異常タンパクやp15INK4bタンパクの発現の免疫組織化学的検討を開始し、検体によるこれらタンパク発現の差異や同一検体内での細胞動態との関連に注目して検討しつつある。尚、飲料水では特にヤンゴン近郊のBago及びAyeyawaddy地区の検体を中心としてヒ素の解析がなされ、村毎で200ppb以上のケースも含めその含有量に大きな差があることが判明した。また、ヤンゴンの保健省医学研究局病理部で第12回組織化学実習会を開催し、エピゲノム解析方法を教授した。47名のミャンマー人医師・医学研究者の参加を得た。
2: おおむね順調に進展している
初期的な検体採集も予定通りで、また継続的な入手をヤンゴン第一医科大学 肝臓外科主任教授Tin Tin Mar及びマンダレー医科大学肝臓外科学教室との共同研究として行うことが合意され、今後への検体入手展望が確認された。また本研究の推進に保健大臣より完全に支援するとの言葉を直接得ている。検体の組織化学的解析は、ミャンマー人パラフィン試料の質の悪さからしばしば問題も起こっているが、その改善法の検討も終了している。現在、遺伝子マーカーの発現検討と肝細胞動態との関連を鋭意解析している。動物実験に関してはやや遅れ気味ではあるが、文献調査等は完了し、単独投与試験に取り掛かれる段階になっている。
ミャンマー人検体に関しては、昨年同様、年末に訪問して検体を有効に採集予定である。飲料水のヒ素汚染に関しても、他のJICAプロジェクトとの協調により検査結果が得られつつあり、更に推進したい。特に、ジメチルアルシン酸を飲ませたラットモデルに於いて、部分肝切除を行い肝再生動態と上記の組織化学的パラメーターに及ぼす影響を早急に検討する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (1件)
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