研究課題/領域番号 |
16H05813
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
小路 武彦 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (30170179)
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研究分担者 |
柴田 恭明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (80253673)
遠藤 大輔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (90516288)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肝癌 / 若年発症 / 鉄過剰摂取 / ヒ素 / 変異型p53 / p15INK4b / 地域的部族的差異 / ミャンマー |
研究実績の概要 |
ミャンマー国では、30代前半から肝癌発症死亡例が多数報告され、その原因として肝炎ウイルス感染と共に国土に含まれる鉄の過剰摂取及びヒ素の関与が指摘されている。今回、民族の居住地域特性に注目して、肝癌発症状況の精査と肝癌病理検体を収集し、特に鉄関連発癌で重要なp53 変異とヒ素によるp15INK4b遺伝子の不活性化を指標として地域間での肝癌若年発症との関連を検討することを目的とした。平成29年度は、平成30年1月7日-12日にヤンゴン及びマンダレーを訪問した。ヤンゴンでは46th Myanmar Health Research Congressに参加して関連研究報告を行い、保健大臣Dr. Myint Htweとも再度会見した。マンダレーでは、マンダレー医科大学外科Prof. Shein Mynintグループと検体収集に関する調整を行った。今回、肝癌の剖検試料を新たに47例収集し、地域別ではヤンゴン地区(22)、バゴー地区(6)、モン州(5)、カイン州(3)、ラカイン州(2)、マグウェイ地区(3)、イヤワジ地区(4)、ネピドー地区(2)であった。その内32例の検体を、病理形態やKi-67の免疫染色及びTUNEL法により評価した結果、高分化型が7例、中分化型が14例、低分化型が11例であった。正常組織と比べ、癌組織に於いて明らかなBerlin Blue染色の増大が認められ、鉄沈着が確認された。またDNAメチル化レベルも昨年同様大きな変化は見られなかったが、5-hydroxymethylcytosineは癌で減少していた。これらの試料でのp53 異常タンパクやp15INK4bタンパクの発現の免疫組織化学的検討を開始している。飲料水ではバゴー地区及びイヤワジ地区で最も高頻度にヒ素汚染(200 ppb以上)村が検出されたので、特に両地域の検体に注目した解析が必要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は医学研究局及びヤンゴン第一医科大学関係者などの協力により、様々な居住地域より47例もの検体を入手した。またマンダレー医科大学外科学Professor Shein Myintグループとの共同体制も一層強化され、ヤンゴン周辺のみならずミャンマー北部地域の検体収集が加速されると期待される。また本研究の推進に保健大臣より完全に支援するとの言葉を直接再確認している。 ミャンマー検体の組織化学的解析には、かつてよりパラフィン試料の質の悪さからしばしば問題が生じた。現在ヤンゴン地域では顕著な改善がなされたが、他地域からの検体では質の向上が必要で、今後の指導が急務であった。現在、適切な検体に対し、鉄沈着程度、エピゲノム変異、遺伝子マーカーの発現検討と肝細胞動態との関連を両国で鋭意解析している。動物実験に関しては、既に作製した鉄過剰モデルラットの解析をヒト試料の結果との関連で進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ミャンマー人検体に関しては、本年同様、適当な時期に訪問して検体を有効に採集予定である。特に、新たにシャン州にタウンジー医科大学が創設され、より北部地域の検体集積はここが中心となると思われるので、訪問し関連教室と協力関係を築く予定である。飲料水のヒ素汚染解析に関しても、並走するJICAプロジェクトとの協調活動と情報共有により重要な検査結果が得られており、それらを基に検体収集地域を絞り込むと共に、更に水に関する鉄やヒ素の含有調査もミャンマー保健省医学研究局の支援の下継続して推進していく所存である。次年度が最終年となるので、得られたデータの積極的な学会発表と論文発表を行う予定である。
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