研究課題
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する分子治療法が開発され、その導入に期待が高まっている。これらの治療法を臨床へ応用する上において、治験により多数例における有効性の検討が不可欠である。しかし、分子治療は遺伝子変異の種類によって方法が異なる「オーダーメイド治療」であるため、個々の治療法の対象症例数が少なく国内において有効性を明らかにすることは困難である。本研究 では、東アジア各国におけるデュシェンヌ型筋ジストロフィー症例の分子疫学を明らかにすることを目的として、ジストロフィン遺伝子解析を行っている。ジストロフィン遺伝子変異の7割はエクソン単位の欠失・重複であり、MLPA(multiplex ligation-dependent probe amplification)法において同定が可能である。しかし残りの3割は1ないし数塩基の微小変異であり、ジストロフィン遺伝子が巨大であるため、多数例において微小変異の同定を行うことは困難である。29年度は、前年度に引き続き、次世代シークエンサーを用いたジストロフィン遺伝子の微小変異を同定するシステムの検証を行った。近年、機会採血において偶然高CK血症を指摘されるなど、若年で受診する症例が増えている。確定診断には侵襲的な筋生検を要する場合も多い。研究代表者らは、次世代シークエンサーを用いたシステムにより、非侵襲的に多数例の解析を行い、多くの微小変異を同定することが可能であった。今後、現地研究者との連携のもと、MLPA法と次世代シークエンサー法を組み合わせることにより、海外の多数例のデュシェンヌ型筋ジストロフィー症例の遺伝子変異の同定を効率的に進める。
4: 遅れている
海外の研究者との連携が十分に取れず、29年度に予定していた成果を十分に上げることができなかった。その一方、ジストロフィン遺伝子の微小変異解析法の構築は予定通り進んでいるため、本年度の遅れを次年度で取り戻す予定である。
東アジア各国(中国、ベトナム、インドネシア、ネパールなど)において現地の研究者との連携を再構築する。そして、現地において 筋ジストロフィーが疑われる症例の臨床診断を行うとともに、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症例の集積を行い、現地においてMLPA (multiplex ligation-dependent probe amplification)法、RT(reverse transcription)-PCR法およびダイレクト・シークエンス法を用いて、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症例のジストロフィン遺伝子変異を解析する。また、症例数が多い場合は、次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析も併用して変異の同定を進める。これらの調査に基づき、東アジア各国におけるデュシェンヌ型筋ジストロフィーの分子疫学を明らかにし、ジストロフィン遺伝子異常のデータベースを構築する。さらに、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する「オーダーメイド治療」の臨床的な有効性を検討するための基盤整備を行う。
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