研究課題/領域番号 |
16H05816
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
鳥居 本美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 教授 (20164072)
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研究分担者 |
橘 真由美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00301325)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 三日熱マラリア / ワクチン / 伝搬阻止 / 組換えタンパク質 |
研究実績の概要 |
三日熱マラリア原虫の生殖母体表面の分子であるPvGs24を標的とする伝播阻止ワクチン開発の可能性を明らかにする目的で、タイ国の患者血液と媒介蚊を用いた抗PvGs24抗血清の伝搬阻止活性の検定を目的として研究を実施した。本年度は、以下の方法で、組換えタンパク質を合成して特異抗体を作製し、タイ国において伝搬阻止活性の検定をおこなった。1)コムギ胚芽無細胞タンパク質合成法を用いた組換えタンパク質の大量合成:伝搬阻止ワクチン候補抗原(PvGs24)の遺伝子を、流行地患者株の生殖母体を含む患者血液から抽出したcDNAを鋳型として、N末端側の分泌シグナル部分を除くほぼ全長の配列をPCR増幅した。増幅された遺伝子産物をコムギ胚芽無細胞タンパク質合成用プラスミドベクターに挿入し、組換えタンパク質発現用コンストラクトを構築した。コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて、GST融合組換えタンパク質(rPvGs24)を大量合成し、アフィニティ精製をおこなった。2)rPvGs24に対する特異抗体の作製:精製した組換えPvGs24を用いてウサギを免疫し、抗血清の作製をおこなった。作製した抗血清の反応性をrPvGs24を用いたELISA法および患者血液を抗原とするIFA法によって確認した。3)抗血清による伝搬阻止効果の測定:作製した抗血清をタイ北西部のフィールドに持参し、患者血液中の三日熱マラリア原虫を用いた媒介蚊への吸血実験を行なった。具体的には患者血液から調整した感染赤血球に異なる希釈倍率の抗PvGs24抗血清を添加し、この再構築した血液を人工吸血法を用いて現地の媒介蚊に吸血させた。吸血7日後に蚊を解剖して、中腸に形成されたオーシスト数を計測することで抗血清の伝搬阻止活性の評価をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していたワクチン候補抗原に対する組換えタンパク質の作製、それを用いた特異抗体の作製を順調に行なうことが出来た。また、タイ国の西北部地域のフィールドにおいて、作製した抗血清と患者赤血球を混合して再構築した血液を人工吸血装置を用いて媒介蚊に吸血させ、蚊体内で抗血清による伝播阻止活性の有無についての検討を行った。その結果、一部の患者血液を用いた実験において抗血清が伝播阻止活性を有することを示すデータを得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後、抗血清による三日熱マラリア原虫伝搬阻止活性の検定を、タイ王国をフィールドとして継続するとともに、既知の伝搬阻止ワクチン候補抗原と阻止効果について比較検討する。また、患者から得た原虫を用いてPvGs24の発現様式や遺伝子多型の解析を行う。 1)抗PvGs24抗体による伝搬阻止効果の測定:初年度同様に引き続き、作製した抗血清をタイ王国のマラリア診療所に持参し、抗血清とマラリア患者から採血した感染赤血球とを混合して人工吸血法によって媒介蚊に吸血させ、蚊体内に形成される原虫数を計測して伝搬阻止活性の検定を行なう。 2)他の抗原に対する伝搬阻止活性との比較検討:PvGs24に対する抗血清と同時に既知のワクチン候補抗原であるPvs25、Pvs230に対する抗血清を同じ患者の感染赤血球に添加して、人工吸血法により媒介蚊に吸血させる。十分に吸血した蚊の中腸に形成される原虫(オーシスト)数を算定し、これらの抗血清の伝搬阻止効率を比較検討する。 3)生殖母体におけるPvGs24の発現解析:マラリア診療所において三日熱マラリア患者(生殖母体陽性)と診断された患者から採血した患者血液を材料として、Percollを用いた密度勾配遠心法によって生殖母体を精製し、Western-blot法、間接蛍光抗体法および免疫電顕法を実施して、PvGs24の発現および虫体内の詳細な局在を確認する。
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