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2017 年度 実績報告書

熱帯熱マラリアに対するACTの有効性と薬剤耐性関連遺伝子多型の解析

研究課題

研究課題/領域番号 16H05817
研究機関長崎大学

研究代表者

上村 春樹  長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (60184975)

研究分担者 五十棲 理恵  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30550355)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード熱帯熱マラリア / 薬剤耐性遺伝子 / アルテミシニン
研究実績の概要

本研究は、アルテミシニンに対する耐性マラリア原虫の出現と拡散の危惧に対して、現場で患者をフォローするフィールド疫学的研究、原虫の遺伝子解析による分子疫学的、集団遺伝学的研究から、対抗する基礎を確立することを目的としている。インドネシアでは2008年にマラリア治療の第一選択薬としてアルテミシニン併用療法(ACT)が使用されるようになり、2017年には感染率を10年前の約1/3にまで減少させることが出来たと報告されている。しかし、東南アジア各国でアルテミシニンに耐性を示す熱帯熱マラリア原虫の出現が報告され、世界のマラリア感染地域においては、ACT耐性の疑われる原虫株を検出するシステムを構築して拡散を防ぐことが重要となっている。
インドネシア・フローレス島のマラリア患者について、ACTを用いた治療後のフォローアップを行い、すべての患者において三日後には末梢血にマラリア原虫が検出されず、アルテミシニン併用療法が有効でアルテミシニン耐性原虫が認められないことを確認した。前年度は、既に収集しているインドネシアの広い地域からの熱帯熱マラリア原虫について、アルテミシニン耐性と関連するKelch13遺伝子領域の多型解析を行い、これらの原虫に変異が認められないことを明らかにした。インドネシアのマラリア原虫では、アルテミシニン耐性は検出されていない。
今回単離したマラリア原虫に加えて、これまでに得ているインドネシアの広い地域からのマラリア原虫について、薬剤耐性と関連する幾つかの遺伝子を解析して、それぞれの地域で特徴ある遺伝子型が検出されることが認められた。インドネシアに特徴的な2種類のpfdhpsの変異について、最初は一部地域にのみ検出されていたが、ヒトの移動に伴ってほかの地域にも広まっていったことを明らかにした。これは、ヒトの移動に伴って、薬剤耐性マラリア原虫が拡散する危惧を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

マラリア治療薬としてアルテミシニン併用療法を用いて以来、各地で感染者の割合が減少しており、十分な人数のマラリア感染者を得るのに時間を要する状況になっている。
アルテミシニン耐性型原虫の出現と拡散の危惧に対して、インドネシア・フローレス島で、アルテミシニン併用療法で治療した患者のフォローアップを行い、すべての患者で三日目には末梢血から原虫が消失、アルテミシニン併用療法が有効でアルテミシニン耐性原虫が認められないことを確認した。前年度、アルテミシニン感受性との関連が指摘されているKelch13遺伝子領域の多型解析を行って、ミャンマーサンプルにはKelch13遺伝子領域に変異を示す原虫株が存在するのに対して、インドネシアのサンプルからは変異がないことを確認している。
インドネシアでも治療効果の低下が疑われる臨床例が報告されたことがあることを考慮すると、現場に近い保健所において、簡単に感度よくマラリア感染を検出出来て、原虫遺伝子の変異の有無も調べることのできる方法を開発する必要がある。それを踏まえて、簡単な操作による遺伝子の単離と簡便なリアルタイムPCRを用いた方法を検討している。

今後の研究の推進方策

継続して、原虫の遺伝子解析による分子疫学的、集団遺伝学的研究と、現場で患者をフォローするフィールド疫学的研究を行って、アルテミシニンに対する耐性マラリア原虫の出現と拡散の危惧に対応する基礎研究を進める。
マラリア治療の第一選択薬としてアルテミシニン併用療法(ACT)が使用されて、マラリアの患者数は減少し、マラリアの脅威を激減させることが出来ている。しかし、多くの地域で媒介蚊はそのまま生息している場合が多く、ヒトの移動によるアウトブレーク、薬剤耐性原虫の拡散に対応するためには、血中の原虫数が低い感染者も検出して治療することが必要となる。マラリア感染の現場で、簡便に原虫を同定、感染率の定量化、遺伝子変異も検出することの出来る方法として、リアルタイムPCRの有用性の検証へと進めたいと考えている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Origins and spread of novel genetic variants of sulfadoxine?pyrimethamine resistance in Plasmodium falciparum isolates in Indonesia2018

    • 著者名/発表者名
      Basuki Sukmawati, Fitriah, Risamasu Petronella M., Kasmijati, Ariami Pancawati, Riyanto Sugeng, Hidayat Ari, Susilowati Dewi, Iskandar, Armika Budi, Budiono, Dachlan Yoes P. , Kanbara Hiroji, Uemura Haruki
    • 雑誌名

      Malaria Journal

      巻: 17 ページ: 475 (1-14)

    • DOI

      10.1186/s12936-018-2597-6

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Sulphadoxine-Pyrimethamine Efficiency and Plasmodium falciparum dhfr and dhps Genotypes in Indonesia Parasites2017

    • 著者名/発表者名
      Basuki S, Fitriah, Risamasu PM, Kasmijati, Ariami P, Riyanto S, Hidayat A, Susilowati D, Iskandar, Armika B, Budiono, Dachlan YP, Kanbara H, Uemura H
    • 学会等名
      2nd Molecular and Cellular Life Sciences International Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] インドネシアの熱帯熱マラリア原虫の薬剤感受性と遺伝子解析2017

    • 著者名/発表者名
      Basuki S, Fitriah, Risamasu PM, Kasmijati, Ariami P, Riyanto S, Hidayat A, Susilowati D, Iskandar, Armika B, Budiono, Dchlan YP, kanbara H, Uemura H
    • 学会等名
      第86回日本寄生虫学会大会
  • [学会発表] Analysis of Plasmodium falciparum of Kelch 13 and other drug resistant genes after introduction of Artemisinin Combination Therapy in East Kalimantan, Indonesia2017

    • 著者名/発表者名
      Basuki S, Fitriah, Habibi M, Budiono, Surya A, Uemura H
    • 学会等名
      グローバルヘルス合同大会2017

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公開日: 2019-12-27  

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