研究実績の概要 |
本研究では、アジアに生息する各種マカクについて、Entamoeba nuttalliとその近縁種の感染実態を明らかにするとともに、虫体を分離培養し、株間の遺伝的多様性や宿主との共進化について解析している。今年度は、アカゲザルから分離培養したE. nuttalli P19-061405株の全ゲノムについて、ロングリードとショートリードの塩基配列データを用い、9,647遺伝子を含む23 Mbのアセンブリデータを構築した。そして、赤痢アメーバ(E. histolytica)に加え、霊長類を宿主とするが非病原性のE. dispar、爬虫類を宿主とするE. invadensとの比較ゲノム解析を行った。その結果、E. nuttalliゲノムに含まれる6,602遺伝子群のうち、4,564遺伝子群は4種の Entamoebaに共通に存在し、1,327遺伝子群は霊長類を宿主とするEntamoebaに共通であった。一方で、114遺伝子がE. nuttalliに特異的に存在していた。詳細な解析を行った結果、8アミノ酸配列[G,E]KPTDTPSの42回反復を含む特徴的なタンパク質をコードする遺伝子が同定された。組換えタンパク質に対して作製したポリクローナル抗体を用いてE. nuttalliの免疫染色を行い、このタンパク質が虫体表面に局在していることを確認した。この他、野生のニホンザルから分離培養したE. nuttalli株について、遺伝子型解析を行った。18S rRNA遺伝子では3タイプ、セリンリッチタンパク質遺伝子では大きく4タイプに分類され、アカゲザルやカニクイザル由来のE. nuttalliよりも遺伝的多様性は大きいことが明らかになった。
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