研究課題
抗ウイルス療法(ART)下で残存するHIV-1の解析は主に先進国の検体で行われており、途上国での情報は極めて乏しい。Treat-all policyによる途上国HIV医療の転換期にあたり、タンザニア共和国ダルエスサラーム市で、ART療法を受けているHIV陽性者の検体収集を行うことを主目的とした。ムヒンビリ医科学大学医学部および保健学部の若手研究者、およびムヒンビリ国立病院の若手医療者の中から、意欲的なメンバーを熊本大学に招き、HIV遺伝子解析実験の研修を実施した。その後、ムヒンビリ医科学大学においても遺伝子実験操作を実施できる環境を整えた。タンザニアで流行するHIV-1の解析は5年以上の前のデータしかないため、まず初めに、治療前、治療中および治療失敗例などの検体を150人ほど集めて、薬剤耐性変異とウイルスサブタイプの解析を実施した。具体的には、Pol領域の遺伝子をPCR法で増幅して、既存データベースを用いて、遺伝子配列上の特徴を解析した。その結果、未治療の感染者においても、ネビラピンなど過去に単剤で使われていた薬剤に対する耐性変異が高頻度で見つかった。これらの結果から、サブサハラアフリカ地域の他の国々と同様、タンザニアにおいても、一部の薬剤については、耐性変異が蔓延していることが分かった。一方、ウイルスサブタイプの解析では、サブタイプC, A, Dが多く見出だされたが、全体の30%ではサブタイプの特定に至らず、組換えを起こしているものと示唆された。これらについては遺伝子解析する領域を広げて、詳細を明らかにしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
タンザニアにおいて意欲的な若手研究者、医療者をチームに引き込むことができ、HIV感染者検体の採取は順調に進んでいる。
これまで感染者のリクルートを実施していたムヒンビリ国立病院では新規感染者の来院が少ないため、来年度に向けて、対象とする施設を増やして行こうと計画している。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Journal of Virology
巻: 92 ページ: e01409-17
10.1128/JVI.01409-17
Frontiers Microbiology
巻: 8 ページ: 80
10.3389/fmicb.2017.00080
Journal of Medical Virology
巻: 89 ページ: 123~129
10.1002/jmv.24612