研究課題
抗ウイルス療法(ART)下で残存するHIV-1の解析は先進国の検体で主に行われており、途上国での情報は極めて乏しい。本研究では、4年間の計画で、タンザニア共和国で最大の都市であるダルエスサラーム市において、ART投与を受けているHIV-1感染者の血液検体を採取して、薬剤療法下で残存するHIV-1のウイルス学的、分子疫学的な解析を実施する。これまでに、ムヒンビリ医科学大学の若手研究者グループとの間で立ち上げた共同研究チームとともに、検体のリクルート、血液検体の取得、保管、およびウイルス学的解析をを組織的に進めるシステムを構築した。そこで、本年度は、薬剤療法を受けて1年以上経過した感染者のうち、ウイルス量が50コピー以下を維持していた症例として190例を集めて、血液検体を採取し、現地で血漿とPBMCに分離後、それぞれを凍結保存してから熊本大学に送付した。同時に、未治療と治療失敗例の検体も集めて、プロウイルスDNA定量時の対照群とした。並行して、熊本大学では、プロウイルスDNAコピー数を定量するアッセイ系を立ち上げて、その検証を実施した。その後、実際の臨床検体を用いて、感染者由来のPBMCに残存するウイルスDNAコピー数の定量試験を実施した。未治療あるいは治療失敗例では、プロウイルスDNAコピー数は、血漿のウイルスRNAコピー数と概ね相関していた。一方、治療成功例では、プロウイルスDNAコピー数は検体ごとに大きく異なっていた。たとえば、ごく少数例については、プロウイルスDNAが全く検出されなかったため、別の高感度アッセイを進めるよう準備している。また、ウイルスDNAコピー数と相関する臨床パラメーターの検索を実施している。
2: おおむね順調に進展している
HIV感染者をリクルートし、血液検体を採取するシステムの立ち上げと維持に成功している。これらを用いたアッセイも着実に進んでいる。
これまでにリクルートした治療成功例の中で、残存するウイルスDNA量と関連するパラメーターの検索を進めるとともに、ごく少数ではあったが、ウイルスDNAが検出されなかった検体について詳細な解析を進める予定である。
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